"ラ・ペリコール"

目次

第1幕

  • ペルーのリマは総督のお祭り(恐らくはお誕生日?)に湧きかえっています。この日の飲み食いは皆政府持ちというのですからお祝いせずにはいられません。町で居酒屋「3カズンズ」を営む3人従姉妹のグァダレーナ、ベルギネッラ、マストリッラも大忙し、そこへ野菜売りに身をやつしたリマの市長ドン・ペドロがやってきます。皆がこのお祭りをお祝いし盛り上がってくれないと彼の地位がヤバいというのですから必死です。3人従姉妹から街の様子をヒアリングしているところへ今度は第一侍従長のパナテラス伯爵がパン売りに変装してやってきます。なんでも総督のドン・アンドレアスが宮殿を抜け出し、お忍びで町に繰り出したのだとか、町の様子を自らの目で確かめ、ついでに可愛い女の子でもひっかけて楽しもうと(こちらの方がメインかも)というのです。万一不都合な真実でも総督の耳に入っては大変と、彼ら二人は変装のままで総督をマークすることにしたのでした。
  • ドン・アンドレアスは医者の扮装で登場しますが、町の人たちにはもうバレバレ、それでもそのことを言ってしまうと角が立つので皆クスクス笑いながら黙っております。変装した市長と第一侍従長に会った総督は町がお祝いで盛り上がっているかどうかを揃って確かめに行きます。
  • 入れ違いにやってきたのは流しの歌手のピキーヨとその恋人のぺリコール、お祭りのリマでなら稼げるだろうと、3人従姉妹の店の前で歌を歌いますが実入りは思わしくありません。朝から何も食べていないぺリコールは空腹に耐えかねてそこにゴザを敷いて休み、ピキーヨは別の場所で稼いで来ようと出て行きます。そこへ一人で戻って来た総督は眠っているぺリコールを見て一目惚れ、何とか愛人として宮殿に連れて行こうと考えます。彼女がひどく空腹であることに付け込んだ総督、彼女をディナーへと誘い出すことに成功しますが、そこへ現れた市長と侍従長(もう正体は総督にばれていました)に、愛人として連れ込むためには彼女が形式的な結婚をしていなければならないという宮廷の規則を指摘されます。そこで侍従長のパナテラスには誰でもいいから夫となる男を探せと、市長ドン・ペドロには結婚公証人を探して来いと厳命し、ぺリコールと食事に行くことにするのでした。彼女はただならぬ予感を感じたのか総督に老親に書くと嘘をつき、ピキーヨにお別れの手紙を書いてそれを3人従姉妹に託します。
  • 結局他の場所でもたいした実入りのなかったピキーヨが戻ってくるとぺリコールがいません。3人従姉妹から手紙を受け取った彼はそこに書かれていたお別れの文句に愕然、居酒屋の柱で首を吊って死のうとしますがそこへやってきた侍従長パナテラスに止められます。ちょうど良いとばかりに彼を結婚相手に仕立てようと、ぺリコール一筋と拒む彼をベロンベロンに酔わせて何とか承諾させることにします。一方市長ドン・ペドロの方も祝日に仕事はしたくないと渋る公証人たちを酒を飲ませて懐柔し、そしてまた総督ドン・アンドレアスもぺリコールをほんのり酔わせて宮廷に行くことを承知させるのでした。
  • 結婚する男が見つかったのならこれ幸いと、総督は二人の結婚をその場でさせてしまおうとします。ヘベレケに上機嫌の公証人たちと、グデングデンになってもはや状況が全く掴めないピキーヨ、そして宮廷に連れて行かれる前に無理矢理結婚させられると聞き、一度は拒んだものの相手がピキーヨだと知って結婚を承諾したぺリコール、タダで祝い酒が呑めると寄り集まってきた群衆と共に阿鼻叫喚のフレンチ・カンカンの中で結婚式を挙げるのでした。

第2幕

  • 宮廷の中の一室、気絶しているタラボーテ侯爵のまわりを貴婦人たちが取り巻き彼を目覚めさせようとしています。彼が気絶している理由ははっきりとは語られてはいませんが、宮廷に流しの歌手が愛人として入ることにショックを受けたのかあるいは昨夜のその祝宴での飲み過ぎか… 同じ部屋ではピキーヨもまた酔い潰れて眠っています。
  • 最初に目を覚ましたタラボーテは昨夜の一件を貴婦人たちに語り、彼女たちの嫉妬心をかき立てます。そこへ状況が良く飲みこめずに起き出して来たピキーヨ、新しくやってきた総督の愛人の夫ということで貴婦人たちの、そして続いては廷臣たちの意地悪な仕打ちを受けます。そんな彼を救ったのが市長ドン・ペドロと第一侍従長パナテラスの二人。ぺリコールを総督の愛人とするために彼女の形式上の夫となってくれたピキーヨに何か望むことはないかどうか尋ねます。早く自由になって愛する彼女(=ぺリコール)を探しに行きたいと答えるピキーヨ。しかしその前に形式上の「妻」を総督に引き合わせる儀式を行わなければなりませんでした。
  • 儀式を見ようと宮廷から大勢集まってくる中、結婚式の時は酔い潰れていて誰と結婚したのか分かっていなかったピキーヨはここで初めてその相手がぺリコールだと知って愕然とし、しかも総督の愛人になるというのですから頭に血が昇ってしまいます。これは作戦だからとなだめるぺリコールの言うことにも耳を貸さず、彼女を突き飛ばしてこの女どこへでも行きやがれ、と啖呵を切るのでした。怒った総督は彼を捕えるように命じ、パナテラスとドン・ペドロは彼を捕えて引きずって行き幕となります。

第3幕

  • 牢屋の中、ここは「反抗的な夫」を閉じ込めるためのところ。誰もいない独房に一人の老囚人が現れます。彼は別の独房に12年間閉じ込められていたのですが、ナイフ一丁で壁に穴を開けようやくここまで辿り着いたのでした。また12年かけて次の壁を破ってやると息巻く老囚人ですが、人の気配に身を隠します。
  • そこへ市長ドン・ペドロと侍従長パナテラスに連れてこられたピキーヨ、彼ら二人の本音での「よくぞ言ってくれた」の賛辞の歌も空しく、ピキーヨはあっさり収監されてしまいます。自棄になってフテ寝をした彼のところになぜかぺリコールが。彼女は総督から貰ったダイヤモンドで看守を買収して一緒に逃げましょうと言うのでした。そこへ折よくやって来たのが髭もじゃの看守。実はこれ、恐らくぺリコールの様子を探るためにこっそりとついて来た総督ドン・アンドレアスの変装なのですが、それに気付かない二人が総督のことをさんざんコケにした後にダイヤで買収しようとしたのだからたまりません。激怒して正体を明かした総督に二人とも牢屋に繋がれてしまいました。ですがまだぺリコールには未練のある総督、いつでも気が変わったら歌で自分を呼んでくれるように、と言い残して去って行きます。
  • 縛られて途方にくれた二人のところに先程の老囚人が現れ二人を手にしたナイフで束縛から解放します。そのナイフで一緒に壁に穴を開けて脱獄しようという老囚人にもっと簡単な方法があるわというぺリコール、歌で総督を呼び寄せ、なびくフリをしながら皆で彼を縛り上げて脱獄に成功するのでした。
  • 場面は変わって第一幕と同じリマの街の情景。脱獄した3人の囚人を捕縛しようと、市長ドン・ペドロ率いる軍隊と侍従長パナテラスが率いる軍隊とが捜索しています。がなんとも頼りなげで様子を見に来た総督ドン・アンドレアスも不満そうです。そこへ総督の慈悲を乞いにピキーヨとぺリコールが現れ、老囚人の演奏するバスーンを伴奏に嘆き歌を歌います。なんかよう分かりませんがその歌に感動した総督は二人を許し、そして彼らは皆に別れを告げて別の土地へとまたドサ回りに出て行くのでした。

Creative Commons License
この日本語テキストは、
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
の下でライセンスされています。
@ 藤井宏行


最終更新:2014年12月13日 16:32