"イドメネオ"

対訳

アリアへジャンプ!

そよふく風(動画対訳)




訳者より

  • モーツァルトはその円熟期には「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「コジ・ファン・トゥッテ」と世俗的なストーリーのオペラを集中させましたので、いわゆる「オペラ・セリア」の神話や古代史に題材を取ったオペラはかなり特異な中身の最晩年の「皇帝ティートの慈悲」を別にすると、この28歳の時のギリシャ神話を下敷きとした「イドメネオ」が最後の作品ということになります。あまり取り上げられることの多くないオペラですが、若き作曲者の意欲が満ち溢れた推進力あふれる清新な作品としてなかなかに魅力的で、このところ再評価が進んでいるようです。
  • 初演前にも作曲者自身に何回も手を入れられているために版がいろいろある上、またそのまま上演すると3時間以上かかるために演奏の都合で様々なカットがなされているためにリブレットを追いかけるのは大変ですが、1990年代の終わり頃音楽の友社より出版されていたアッティラ・チャンバイ編の名作オペラブックスのシリーズにこの「イドメネオ」があって、ここに掲載の対訳リブレットは原典版に準拠しつつも後に追加された部分を補遺としてつけており、大変に参考になりました。同じくこの名作オペラブックスのシリーズにあった「後宮からの誘拐」も、上演のために台詞部分がアレンジされていないオリジナルの台本(とおぼしきもの)を掲載してくれており、この前翻訳を試みる時にこの作品のオリジナルの姿を知る上ではとても有難いものでした。オリジナル探索に物凄く苦労した「皇帝ティートの慈悲」も、もしも名作オペラブックスにこの作品があったならと惜しまれてなりません。現在同じ音楽の友社から刊行が続けられているオペラ対訳ライブラリーもそういう意味でのこだわりが素晴らしいので、今後も息長く続いて行って欲しいものです。(しかしこんなところでクオリティはともかく無料で対訳を提供するのは影響力は小さいとはいえなんだか彼らの商売の邪魔をしているようなところもありますので、私としては今後は対訳書の出版が商業ベースにはまず乗らないような作品に専念しようかなと思います 今までに訳しちゃったものを取り下げることまではしませんが 皆さん ここに無料の対訳があるからといって「ファルスタッフ」とか「蝶々夫人」「こうもり」の本を買わずに済ませてラッキーなんて考えず、どんどん支えてあげて下さいね)
  • さて脱線はさておき 管理人さんに上げて頂いていたテンプレートですが、第1・2幕は私の見た範囲では概ね初演版と対応していたようですし、多くの録音と対応は取れていたようなので一部の誤植修正とわずかな欠落の追加を除いてはそのままにしました。
  • 3幕は第8場までは問題なしですが、テンプレにある第9場 No.27のイダマンテのアリアは初演に際しカットされたもののようです。また第10場のイダマンテとイリアのやり取りも初演時にカットされたもので、この部分は初演稿では長いイリアの大司祭への訴えかけになっています。挙げられているテンプレの方がドラマティックですし、このリブレットで歌われることも多いようなのでここもそのまま訳しました。その後のネプチューンが登場するところ以降は3パターンのテンプレートが挙げられておりましたが最初のが初演版 後のふたつは初演に際しカットされた2バージョンということのようです。ちなみに初演版ではもっと短いNo.28aというのもあるようですがこれは省略 もとのテンプレにあった3つのみ全部訳しておきました。詳細にご興味おありの方は「名作オペラブックス」を図書館ででも探してご参照ください。
  • 引き続いてのNo.29 エレットラのモノローグですが上にあるのが初演版でNo.29aのアリアがつかない形、下がアリアに繋がる初演版でカットされたバージョンのようです。また最後のNo.30a、イドメネオのアリアも初演版ではカットされたものだと「名作オペラブックス」ではなっておりました。もっともこれらは歌われることの方が今は多いでしょうか。
  • 1781年の初演はミュンヘンで、そしてリブレットの改変はないようですが1786年にはウィーンで上演されており、その際には王子イダマンテはもともとのカストラート・ソプラノからテノールに書きかえられたようです。このテノール版でもよく取り上げられており、有名なところではカール・ベーム指揮のものはこの版で演奏している録音のようです。

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@ 藤井宏行

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最終更新:2015年06月14日 17:24