"ヘンゼルとグレーテル"

対訳

アリアへジャンプ!

抜粋(動画対訳)

夕べの祈り(動画対訳)


グリム童話

  • まずしい木こりの男が、大きな森の近くにこやをもって、おかみさんとふたりのこどもとでくらしていました。ふたりのこどものうち、男の子がヘンゼル、女の子がグレーテルといいました。しがなくくらして、ろくろく歯にあたるたべものを、これまでもたべずに来たのですが、ある年、国じゅうが大ききんで、それこそ、日日のパンが口にはいらなくなりました。

訳者より

  • クリスマス時期のオペラの定番としてドイツ語圏では12月頃に良く上演され、子供連れで鑑賞されることも多い作品だと言います。ただ音楽はワーグナーの楽劇を引き継いだような結構濃密なものなので、このシンプルなメルヘン劇には少々柄が大きいような感もなくはありません。ですがメロディの夢見るような美しさや そこかしこに散りばめられた伝承のわらべ歌がなかなかに良い味を出しています。
  • グリム童話で良く知られたこのお話、原作は相当残酷だったようですが、グリムの編纂の段階でかなり毒を抜かれ、このオペラでは更にほのぼのとした内容に変わっています(もともとは貧乏に耐えかねての子捨てのお話だったものが、このオペラでは叱られて家を飛び出したヘンゼルとグレーテルが道に迷って帰れなくなってしまう、だからお父さんもお母さんも心配になって森へと探しに行くのです さすがに子供を捨てる話をクリスマス時期に子連れで見に行く訳には行きませんからね)。森の中では眠りの精や朝露の妖精まで出てきてなかなかに豪華な歌声が聴けます。このふたりの登場人物、ほんのわずかな出演なのですがこのオペラの録音では結構な大歌手を起用することが多く結構な聴きごたえなのです。聴きごたえという点では第3幕に出て来るお菓子の魔女、なかなかにコミカルで強烈な役柄なのですが、この役、大ベテランの女性歌手がやるばかりでなくリリックなテノールがおばあさん声を真似てやることが意外と多く、それらがなかなか面白いのです。なかでも絶妙なのはスウィトナー&ドレスデン国立歌劇場の録音で歌っているペーター・シュライヤー、エコーまでビンビンに効かせて大変な熱演です。
  • 国内盤に添付されている日本語の対訳は、私の知る限りすべて山野敬雄氏の訳したものでした。これは生き生きとしてなかなかに素晴らしい訳なのですが、ところどころちょっと訳し崩し過ぎているように思えるところもあり、もう少し直訳に近い内容で原詞への理解を深めることができるものも求められるところです。残念ながら商業ベースでは誰もやらないと思いましたので、浅学菲才の身ではありますが今回チャレンジさせていただくこととしました。ドイツの風俗や民衆文化などが分からないと意味不明のところがたくさんあり、うまく訳しきれていないところも多々あるかとは思いますがそこはご容赦頂ければと思います。

Creative Commons License
この日本語テキストは、
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
の下でライセンスされています。
@ 藤井宏行

Blogs on ヘンゼルとグレーテル

最終更新:2021年09月27日 20:40