"アッティラ"

対訳

聖なる無限の祖国への愛よ(動画対訳)



訳者より

  • ヴェルディ初期の、なーんも考えずに音楽にただ身を任せば幸せな気持ちになれる作品のひとつです。それだけに他の初期作品同様、ストーリーはあまり練られておらず、思わずなんじゃこりゃと叫びたくなるような展開にあふれています。一応5世紀、ヨーロッパを恐怖のどん底に落とし込んだ蛮族の王アッティラのことを題材にしてはおりますし、アクレイアの戦いの後の町の惨状や、彼らの襲撃から逃れるためにできたヴェネツィアの町の始まりの様子なども描写はされておりますが、ここで描き出されている王アッティラは何とも情けなく、間抜けなキャラのように思われますし、他の登場人物たちもなんともユルい言動に終始し、緻密なドラマ展開を求める人には到底満足頂けるものではないのではないでしょうか。もっとも台本作者を弁護しておけば、当時のオペラがそういうお約束で作られていたから、というところもあるのでしょう。ただ この殺伐とした戦争の時代の雄渾な表情は若いヴェルディの手で見事な音楽になっています。
  • ナブッコのアヴィガイッレのように、男勝りの烈女オダベッラがアマゾネスかワルキューレといった感じで出てくるのも良いです。折角プロローグでそんな女たちを複数登場させているのですから彼女たちのコーラスでもあれば完璧だったように思いますが、時代はまだそこまで進んでいなかったようですね。
  • ワルキューレ繋がりで思い出しましたが、このアッティラ率いるフン族、このオペラではなぜかゲルマンの神さまヴォータンを信仰していることになっていますね。史実を調べきったわけではありませんがちょっとこれも考えにくいところです。こんなところでワーグナーのニーベルングとの接点を見つけるというのは私にとってはたいへん意外なことでした。

Creative Commons License
この日本語テキストは、
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
の下でライセンスされています。
@ 藤井宏行

Blogs on アッティラ

最終更新:2015年06月27日 08:31