青少年科学館:大阪ガスビジネスクリエイト(9.22)

<実施概要>

日 時:2008/9/22 1時30分~3時45分
場 所:神戸市立青少年科学館
対象者(所属・名前):大阪ガスビジネスクリエイト株式会社 スペースマネージメント事業部 神戸市立青少年科学館 河合充治館長
参加者:中澤、佐伯、大島

<聞き取り内容>

(1)大阪ガスビジネスクリエイト(OGBC)、大阪ガスセキュリティーサービス(OGSS)の共同事業体ですが、なぜ共同体となったのですか?

館長:両者とも大阪ガスグループで、もともとそれぞれが施設の運営、管理という仕事を、違う側面からやっていた。
→OGBC(大阪ガスのショールーム、科学館の運営、イベント企画などのノウハウを持つ。)
→OGSS(警備の仕事のノウハウを持つ→公共施設の施設、ホームセキュリティー・アイルス、駐車場の管理、神戸かもめリアの警備を請け負っていた。)

今回の青少年科学館の指定管理者については、最初から共同事業体として考えていた訳ではなく、OGBCだけが単独で応募する予定だった。しかし、実際の指定管理者になれば、設備管理や警備を下請けに任せなくてはならない。それは他の会社と同じような手法である。せっかく自分たちに足りないノウハウを持つ会社が同じグループ内にあったため、企画書を提案する段階で共同事業体とすることとなった。よく知っている(同じグループの)会社が連携して、指定管理者として施設を運営していく、という点が、セールスポイントとなった。

※1その反面弱みでもある。1社でした場合、安い下請け会社に任せることが出来るので、コストをもう少し低くして運営を行えたはず。共同事業体になることで、2つの会社であるため、対等な人件費がかかってしまう。
行政からみると、受けはいいと思う。OGBCからみるとコストがかかるからあまり…

(2)下請けではなく、同じグループのほうが連携をとりやすいのでは??

そうでもない…連携がいい会社もあるが、別にグループの中でしなくてもよかった。

(3)指定管理者のイメージはどうでしたか?

個人的には指定管理者が全くどういうものかわかっていなかったため、イメージなどなかった。

(4)なぜ指定管理者になろうと思われたのか?

≪会社の思い≫

①大阪ガスグループ内の施設運営に携わるOGBCの社員のお給料は、親会社である大阪ガスから出る。つまり、グループ内だけでお金が回っている(名井作)運営のノウハウをグループ内でしか活かすことが出来なかった。そのため、会社内以外でも力が発揮できるのか、ということを試すことが出来、かつ外貨を稼ぐことができるという目的があった。

②公共の施設を運営することは、会社のイメージアップにつながる。(儲かるかどうかは別だが、悪いイメージがつくことは全くない。)行政との信頼関係が出来る。大阪ガスはどちらかといえば公益な会社であるため、地域には責任がある。社会貢献ということも一つのキーワード。OGBCのイメージではなく、大阪ガスという会社のイメージが上がる。

補足:表向きには②だが、本当の狙いは①。イメージのよい中で、確実に外貨が取れる。
今後、指定管理者として生き残っていけるのは、公益企業ではないか?普通の企業ではあまり利益が出ない。信頼があるから任せてもらえる。

(5)デメリットは?

※1人件費の問題。メリットの部分を隠しながら運営している。

(6)行政が運営していた頃と具体的に何が変わったか?

①提案段階で、開館営業時間を延ばすとしていた。
開館営業時間が9時~16時30分まで→金土日祝、夏休み・春休みは19時まで
プラネタリウムは1日5回→8回(金土日)として、市民サービスを向上させることを目的とした。そこが最も評価されている点

②以前の体育協会が運営していた頃より、(※2レベルは落とさず、営業時間を延ばし、)一年間に6000万から7000万削減することができた。
→※2なぜできたかは、以前の職員(理科の教師、学芸員など公務員)の給料が高かったから。
  • 広報誌など、行政のころは、ずっと同じ会社に依頼していた(随意契約、業者が固定されてしまう)が、もっと安い会社を探し、現在は以前より、20%ほど削減することができた。
公務員:もともとあったお金は使ってなんぼ!残したら来年の予算が減る…
↕コストダウンの意識の差
民間:予算は削って残すこと!

(7)学芸員や理科の教職免許をもつ従業員(?)の人数にどれくらいの変化があったのですか?

減っているが、学芸員や教員など、重要なポストの人数はあまり変化ない。一方館内を案内するアテンダントの女性(現在は12人)や、プラネタリウムなど、天文に関わる職員の人数は減ったが、今までの営業内容とはレベルを落とさず行っている。

(8)イベントなどで、行政が運営されていた頃と大きく変わったところは?

イベントの回数は特に変わっていない。
SP室が、イベントをしたり、広報の印刷をしたりするなどのノウハウをもっていたため、最初はそちらに相談していたが、現在はノウハウがついてきたので、青少年科学館でしている。
市民の声を元に、プラネタリウムでは、アロマをたいてみた。

(9)行政からの圧力はある?

  • 印刷業者など、神戸にゆかりのある業者を選んで欲しいといわれる。→一年目は以前と同じ会社に以来したが、それ以後は変えた。=結果的にコストダウンに結びついた。
  • アンケートの声をちゃんと取り入れること。
  • 教育施設という目的があるため、思い切った(集客施設としての)変更ができない。(プラネタリウムをカフェにするなど。)行政はいきなり変えるのではなく、徐々に客を増やしていくことを望んでいる。

(10)利用者の声を聞くためにどのような努力をしているのか?

アンケート(プラネタリウム月1、土日にしてもらっている/団体客には、学校の先生方に協力してもらっている)の声をもとに現実化している。
HPで意見をもらうことを始めた。
HP上に掲示板のようなものを作りたい。(意見の一方通行にならないよう)
アンケートの内容は「プラネタリウムで上映するにはどのような番組がいい?」「アロマの中でみたい」など。

(11)H18=101%→H19=113%への来館者数の伸びはなぜ? どのような仕掛けがあったのか?

★プラネタリウムでの工夫
  • H18年度は手探りの状態だったので、以前の手法を引き継いだ。営業時間を延ばしたわりに、いたずらに人件費がかかっただけで、16時30分以降の入館者数がほとんどなかった。→限られた予算の中で、開館延長したことの目玉として、プラネタリウムの上映番組を探してきた。(行政が運営していた頃は、科学館で作った番組しか上映できなかった。今でもそれは基本だが、会社のお金で番組を買った。)「銀河鉄道の夜」関西初上映。→今まで1人か2人しか入っていなかった時間帯に、一度に60人入るようになった。1万2000人の増加!!
  • コンサートの回数の増加(Jazzなどをする。)

★広告の仕方
  • かしこまった企画の仕方ではなく、集客性・話題性のある企画作りに変更(忍者など。)
  • ミント神戸の大型テレビにコマーシャルを流す
補足:神戸市内の小学校136校はベースのお客さん。教育施設としての役割も大変重要。集客性や話題性だけではいけない。客層に幼稚園・小学生が多いが、もう少し大人の層にもきてもらいたい。もう工夫をしきってしまったので、今年どのような工夫をかんがえていくかが勝負!!

(12)求められたことを定められた期間で行うことは出来る?短くないか?

求めるものは様々だが、短いとかんじることはない。しかし、科学館は専門性がいるため、1から従業員を教育することを思うと、非常に時間が短く、4年と期間を限定されることで、従業員のモチベーションを保つことが大変…その点を考えると短い。

(13)次回の公募で別の団体に変わったら?

一番の不安。社員や公務員は別の部署に移動すればいいだけ。
指定管理者のために雇った人たちはどうなるかがわからない。そのため、有期契約で一年ごとに契約している。契約社員は不安が募っている。館長さんも不安の種。
育成だけに時間をかけることが出来ず、同時並行で仕事もしていかなければならない。

(14)科学館が契約打ち切りになった場合どのような策を考えられていますか?

  • 科学館で育った契約社員が、習得したノウハウを活かせるように、科学館系列の指定管理者をもっと増やし、彼らが働ける場所の確保をしたい。

(15)今後もし機会があれば、指定管理者としての活動の場を増やそうとお考えですか?

大阪ガスとしては、会社の得意な分野で指定管理者の場を増やしていきたい。=契約社員の働き口の不安があるため。
契約社員の中から、未来の正社員を探すことに、指定管理者の場がいかせる。
現在の7施設では、正社員として契約社員を雇っていくことは不可能。
指定管理者になる側も行政を選んでいる。経済的に本当に危ない行政は受けない。

(16)神戸市内の指定管理者同士で交流する機会はあるのか?もしあればどのように役立っているか?

月に一回館長会議をする。一応情報交換はするが、館長にとってはあまり役に立たない。
入場料をとり、貸し館を取っていないのは科学館だけ。他の施設は利用料金制や貸し館制をとっているため、話が合わない。科学館は市民からいただいたお金は全て行政に納めなくてはならない。
札幌で全国政令指定都市科学館協議会「指定管理者制度導入のメリット・デメリット」
企業が指定管理者になっているのはOGBCと鉄板だけだったため、質問殺到。

(17)OGSSとの業務分担、責任はどのようにされているのか?

最初はOGSS:設備・清掃・警備は20%、OGBC:残りの80%施設管理、運営。
しかし、2:8では、対等な共同事業体としての関係とは言えない、とOGSSからの意見。(市は全く関係ない。社内での問題)
協定書があり、細かい業務の内容はそちらに記載されている。
展示物は設備という考え方のもと、OGSSの管理下にし、業務比率が59:41くらいになった。
このようにしないと、OGSSに十分な成果が現れない。しかし、何かあったときには、責任は代表企業であるOGBCがとらなければならない…。
設備の面でも、業務分担はOGSSだが、もし何かトラブルがあった場合は館長が解決していかなければならない。
ある機械の不備で、OGSSがミスをし、お客様に迷惑をかけた→都合のいいときだけ下請けぶる
次回もOGSSと共同事業体として応募するかはわからない。強みだと思っていたが、OGBCにとっては利点ではなかった。次回は別の会社と共同事業体として公募するかもしれないし、逆にOGSSが他の会社と組んでだしてくるかもしれない。

(18)市民の立場からすると、指定管理者が変わると、サービスの面において、弊害が生じるのでは?

市民はあまり意識していない。科学館に携わっていたOG・OBの方々や従業員からの批判が多かった。「民間は教員などわかっていない。儲け主義に走るのでは?」という不安のため。最初は大学の教授などに厳しい意見を言われた。中からのハレーションはあったが、一般の市民はあまり気づいていない→逆に悲しい。本当はもっと変わったということを市民に実感してほしい。

《その他》
  • 行政の評価の仕方がよくわからない。
  • 企業に指定管理者を任せることに興味をもつ他県の議員も話を聞きにくる
  • 大阪ガスグループだからこそ、指定管理者として成り立っている。公益企業だから、利益が取れなくても、地域に根ざした活動ができる。単に儲けだけに走ると絶対無理。
  • 教育施設というあり方が、従業員の思いと食い違うことがある。集客性や娯楽性を追及することと教育施設という存在価値のバランスの難しさ。




<追加で聞き取りが必要な項目>

  • 学芸員の身分は?行政によって雇われたのか、大阪ガスビジネスクリエイトによって雇われている人なのか?
もし大阪ガスビジネスクリエイトによって雇用されている職員だとすれば、その職員は大阪ガスビジネスクリエイトが指定管理者になる以前から働いていた学芸員なのかそうでないのか。

  • プラネタリウムの入館料収入金額が1800万円を上回った場合、その50%が協定に基づきOGBCの収入となるとされていたが、1800万円以上という基準はどういった経緯から設定されたのか?



<感想・反省等>

前回のプレインタビューでも感じたことですが、私たちは、相手が話してくれないと話を円滑に進めることができないと思いました。行政のときは、インタビューを受けてくださった方が受け身だったので、私たちも用意してきた質問しかできませんでしたが、青少年科学館では館長さんの側から様々なことを話してくださったので、用意していなかった質問も自然と思い浮かびました。まずは相手にたくさん話してもらえるようなインタビューの導入を考えていくべきだったと感じました。そして、なにより、インタビューする私たちが受け身になっていてはいけないと感じました。



(更新者;佐伯  日時;2008/10/8 11:18)




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最終更新:2008年10月08日 11:18