五節 忠誠と野心30

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「あなたの噂はセシル殿より伺っております」 今まで口を閉じていたヤン言う。 「セシルだと! ということは!」 「ええ……此処に来ています……」 「何処だ!」 慌ただしく、ヤンの後ろへ目を這わすシド。 「今は城の別の所にいます……」 「本当なのだろうな!」 「はい……証明することはできませんが……」 シドは目前の男をまじまじと観察した。その後。頭の中で少し考えこう言った。 「分かったよ。お前さん達を信じるよ。なかなか礼儀はわきまえとるようだからな」 それだけで断定するには早計かもしれないが、シドにはこの二人が自分を悪いように扱うようには 思えなかった。 セシルが当てにする理由も何となくだが、分かった。 「それと儂以外にも、牢に捕まっとるものが沢山いる。そいつらも助けてやってくれんか?」 「はい……そちらの方は既に終わっています」 「ほう……なかなかの手際の良さじゃな……どうじゃ、私の弟子になるつもりはないか」 弟子というのはもちろん飛空挺技師としてだ。 「遠慮しておきます。私は元々モンク僧という身。武を重んじ、日々の鍛錬に励む身です。 それに私はお国柄上機械に触れた事が滅多に無く……その機械オンチなんです」 やや恥ずかしがったかのような告白を、ヤンが言うのは初対面のシドでも可笑しく思えた。

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