五節 忠誠と野心31

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「はは……良いのだ! だが、気が向いたらいつでも声をかけてくれ。それにしてもお前さんはファブールの ものだったのか」 その国の名は大空を駆ける翼の創始者であるシドが知らぬはずはなかった。 シドの頭には常に世界中の地理が咄嗟に引き出せるほどの知識があるのだ。 「そう言えばまだ名前を言っていませんでしたね。私はヤンファンライデン。ヤンと呼んでもらって結構です」 「そうか。よろしくな」 差し出された手をがっしりと掴むシド。 元来シドはこのようなタイプ。セシルに似ているような人間は非常に好みであった。 「そちらの老人も紹介しておきましょうか……」 程よい握手を交わした後、ヤンがテラの方へ向く。 「こちらは……」 直後、シドが数瞬の間だけ宙を舞う。そして、近くの壁にたたきつけられた。 何が起こったのかは最初分からなかった。 だが、テラの方を見ると、その答えがあった。 「テラ殿……」 テラは拳を前に付きだした格好で止まっていた。 おそらくは彼がシドを殴りつけたのであろう。 「何故……」 そして今度は何故そのような行動に至ったのか。その理由が直ぐには思いつかなかった。

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