五節 忠誠と野心36

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最初に異変に気づいたのは、ヤンだった。かすかな地響き。 その音と振動は徐々に大きくなっていく。不安に駆られる一同。 「見ろ、壁が、壁が迫ってくる!」 シドが叫んだ。地響きの正体、それは迫りくる壁の仕掛けの作動音だったのだ。 「いかん、退け、退くのじゃ!」 一同は通路を引き返した。迫りくる壁のせいで、道幅はどんどん狭くなっていき、 通路の入り口に到着した時には、大人の肩幅程にまでなっていた。 「開かない。まずいぞ!」 入り口の扉をこじ開けようとしたヤンが、切迫した調子で言った。 セシルもシドもヤンに加勢したかったのだが、道幅がそれを許さない。 セシルの脳裏に「万事休す」という言葉が浮かびあがって来た。 その時、セシルは自分の足元を小さな影がすり抜けていくのを感じた。 パロムとポロムだ。二人は互いに背中合わせになって、壁を押す構えをとった。 「パロム、ポロム、何を・・・」 双子の真意が読めず、セシルは思わず問いを発した。 彼らは構えを崩さず、顔だけをセシルに向けて、口々に言った。 「あんちゃん、今まであんがとよ」  「お兄様が出来たみたいで、とっても嬉しかったですわ」 喜びと寂しさの入り混じった、複雑な表情だった。そして言葉を続けた。 「あんたらをここで殺させやしない」 「テラ様! セシルさんをお願いしますわ」 先ほどとは打って変わって、断固たる決意がみなぎっている。 ここに至って、セシルはようやくパロムとポロムの意図に気付いた。 「よせ、やめるんだパロム、ポロム」 しかし二人はセシルに耳を貸す様子はない。 「行くぞ、ポロム!」 「うんッ! 」 セシルは絶叫した。 「やめろー!」

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