五節 忠誠と野心39

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「セ……シル……殿!」 揺さぶられ、声をかけられる。 そして、やっと自分が今どこにいるのか、何をしているのかはっきりと認知できる程に、意識が 鮮明とする。 「ベイガン……」 今にも消え入りそうな声で一声の返答。 見渡せば、あちこちに穿たれた、床や壁の破片、魔物の亡骸に、流れる血。 激戦を物語るような物証が目に入ってくる。 「助けられたのか……?」 普段の自分ならこんな失態は起こさないのに。単純な自責の念。そして、命の恩人に 対する感謝。 「ええ……此処で死なれたら私が困りますからね。私が拘りたいのは、あくまで私の手による目的の 達成。その為にはいかなる邪魔が入ることも許さない……」 剣を鞘から抜き出す。 「だが、過程はどうでもいいのですよ……大切なのはそれをやり遂げる事。本来ならもっと手の込んだ やり方もあるとは思いましたがね……」 最前までの感謝がだんだんと、その形をセシルの中で失っていった。 「何を考えていたのかは知りませんが、あなた、否もういい。貴様もつくづくと焼が回ったものだな。 敵の真っ直中で考え事かあ……のんきな者だな!」 何時になく饒舌な言葉は、確実に自分に向けられたものだ。そうは断言できる。 ならばこの言葉の意図することは。 「じゃあな……」 言葉が終わらない内に剣閃が目前に見えた。 咄嗟、剣がセシルの肉体を切り裂く前に痛む体を何とか動かし回避行動する。 「なんだ、まだ息があったのか……」 しぶとい奴めと付け加え、もう一度剣で斬りかかってくる。 再び回避するセシル。 何度か、頬が傷つき、微量の銀色の髪が宙に舞う。 「一つ聞く。君は最初からこんな事を……」 セシルも普段とは違う、何時になく険しい口調で問いつめる。 「当たり前だろ! お前を倒す、殺す事こそが私の目的、いや使命なのだからな……」 「忠誠心があるといったのは嘘だったのか!」 だから手を組んだ。それなのに…… 「今までが間違えていたのだよ……この国は! 今こそがこの国の真の姿! そうは思わないかね……」 「誰が……」 「残念だ、私は今、この国の為に尽くすのだ。其処に何の問題がある!」 「くっ……!」 「何故……僕を……」 「簡単だお前は今の国家に反抗する者だからさ! 一度この国を棄てた者が何をしに戻ってきたかと思えば 王を問いただすだと! 笑わせてくれる!」

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