五節 忠誠と野心50

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そんなやりとりの中、セシルだけはまだ息を抜いてはいなかった。 彼には、まだベイガンが生きているのではないか? その考えが抜けきっていなかったからだ。 「!」 僅かながら、瓦礫の動く音。空耳ではないだろう。 一歩ずつ、その音の方向へと、セシルは近づく。 そこには…… 「ベイガン! やはり……」 「ははは……まだ終わってはいないぞ……」 それが明らかに虚勢に変わりつつあるのが、セシルには分かった。もはや彼には戦う力は微塵も 残ってはいない事も。 「もうよせ! ベイガン」 そんな相手を倒す気もセシルには無かった。 「だが、私はゴルベーザ様に誓いをたてたもの……今更、貴様の考えに屈する気はない。それにこの 姿……否、例えどんな事があろうとも私は、ゴルベーザ様に……」 残った片腕の振りかざし、全力でセシルへと飛びかかる。 その勢いは既に無く、倒す事は容易に等しい。 (ベイガンを打つことは……!) 何かがセシルの中で引き留める。 「セシル殿……早く……」 後ろでヤンの声がする。おそらく、この死に体の敵をセシルが倒せる事等、周知しているのだろう。 その声には心配するよりも、加減するなという意味あいが強く感じられる。 (僕は……) 迷う暇は僅かしか与えられなかった。 そして…… 横薙に払った、パラディンの剣はベイガンの腹部を綺麗なまでに一閃した――

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