変わる世界 交錯する言葉16

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「ふん、どちらにしろ好都合だわい!」 ふいに二人の間に一つの声が割り込んだ。 「いずれ、ゴルベーザのやつには直接此方からしかけてやろうと思っていたところだ。手間がはぶけてよかったわ!」 「テラ……」 彼もまたヤンと同じくゴルベーザを恨む者――愛娘を最悪の形で奪われた一端を担いだ――その怒りはヤンのような国を 愛する形ではなくたった一人小さな存在のためにある。 ……それゆえに根はとても深い。 「ふん、ギルバートがあのザマだからな……私があの男のぶんまでアンナの怒りをぶつけてやらねば……」 磁力の洞窟からの帰還の後、ギルバートに対しては少し心境の変化があったようだ。 以前は「ギルバート」とその名を呼ぶことすらしなかったし、彼に関係する事であるのなら、すぐさま敵意をむきだしたり 無関心を決め込むのが常であった。事実ヒソヒ草の時も、ギルバートの名が出た瞬間に興がそがれたような素振りに 変貌した程であった。 ギルバート――彼の憎しみを担う、もう一端の存在。簡単に許すという事は出来ないだろう……ヤンもシドも彼の気持ちには 多少なりとも、同意していたのだ。 だが、今は、多少なりともギルバートの事を認めたのか? 否――許すことが出来たのだろう。テラの彼に対する姿勢から、 厳しさは緩和されつつある。しかし、それはテラの今までの憎しみがっふっと立ち消えたわけではない。 「メテオ。この魔法さえあれば……」 誰に向けてでもない。一人ごちるテラには鬼気迫るものがある。それは誰にも邪魔をすることが出来ぬ意気。 そう……テラにとっては今までギルバートに向けていた悪意すらもがもう一端の矛先に向かっただけに過ぎない……だから ギルバートの事も水に流せた。少なくともセシルにはそう感じられた。 だが異常なまでに燃え上がるその闘志は、一回りまわって、ふっと立ち消えそうな脆さも備えているような雰囲気があった。 まるで、その命を燃やすかのように……

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