変わる世界 交錯する言葉22

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ファブールの邂逅以降、敵味方としてそれぞれ向き合う機会は何度もあった。 しかし、その時にはカインはそっけなく上からの通達を述べると颯爽と引き返して いくだけであっただろう。 <話すことはそれだけだ――> バロンの上空では一言だけであっただろう。 だが今、この瞬間カインはセシルに対し、久し振りと言ったのだ。 「ああ……そうだね…カイン」 実際にセシル本人も、<今>のカインには充分に接しているとは思っていなかった。 これが、事実上、カインとはファブール以降との再会になる―― カインは何を考えているのか? 何故そんな事をする? 戸惑いは尽きない時もあった。 考える時間も何度もあっただろう…… そもそも他人は他人。いくら血肉を分け合った程の兄弟や、揺り籠から墓場まで苦楽を 共にする程の親愛なる友、人生に多大な影響を与えるほどの恩師――いかに素晴らしく 形容しようが、自分以外の誰かなのである。 時々、すれ違いがあったとしてもおかしくはない。否……むしろ当然なのである。 <時々―あいつの事がわからなくなります……> 小さい体を呈して、セシル達を救った双子の魔道師――その姉がふいにこんな事を口走った時があった。 阿吽の呼吸で魔法を唱える姉弟でさえ、完全なる理解の上で成り立っている訳ではない。 ならばセシル――カイン――それにローザ。無邪気な子供でない三人であれば、なおのこと完璧な要素で 構成するの到底無理であろう。 「また会えて嬉しいよ――」 相互理解。嘘の無い関係。人間が今のままである限りそんな世界は一生やってこない。 人は常に罪という十字架を背負って生きていく。それは増えることはあっても減っていくことはありえないだろう。 だからこそ――人は十字架を背負う咎人であるからこそ、これ以上の道を踏み外さないようにする。 光<パラディン>という名もその為に授かったようなものだ。長き戒道を行く先の光――行く先は闇でも光があれば先は明るい…… 「ふん……俺もだぞセシル」 ふと零れたセシルの言葉にカインも返答する。 「こうやってまた相まみえる事が出来るのだからな……」 「やはり……戦うのか」 「当然だ!」 静かな問いを荒らぶる咆哮が打ち消す。 「その為に用意したのだよこのゾットという舞台を! ゴルベーザの事だ……クリスタルは貰えど、ローザを 返すつもりなど毛頭にないのだろうな! それならば、俺も……好きにやらせてもらう事にした!」 そこまで分かっていながらもカインは相まみえようとしているのだ。 「分かった」 静かながら、力強くセシルも答えた。 以前の暗黒騎士のセシルには迷いがあった。親友と剣をまみえる事など到底できない。表面では戦うつもりであっても 何所かで拒否して、本気になっていなかった。 だけど今は違う……どんな事にも――愛する者や信じていた仲間達のどんな側面であろうが、目を背ける事なく受け止める。 今なら躊躇いなく剣を取ることが出来る。それは決して友との完全なる拒絶や否定ではないからだ。 傷つける事を怖れつつも、本当に恐れていたのは自分が傷つく事…… ファブールからの光の道筋は今終わりを迎えようとしている――だからセシルの心は迷いなく剣閃を走らせることが出来るのだ。

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