変わる世界 交錯する言葉25

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日々、監禁生活が長くなる内に彼女も色々考えた。 残されたのは三組の二人。自分とセシル。自分とカイン。そしてセシルとカイン。 TWO OF US――残酷な時間により崩れ去ってしまった過去――結末なんて全て知っていたのかもしれない自分のアイデンティティー。 しかし決して消えはしない。 過去という事実は否定は出来ても、完全に消滅させる事はできない。そして誰もが持つその過去の「事実」は 「経験」として個人に刻まれる。 その道筋を常に振り返り、自分の軌道を常に忘れなければ、人は完全に変わってしまうことなどない。 いつかきっと、何度でも、どんな絶望が訪れても、立ち直れる。 本当の「強さ」とは、ただ今すぐにでも自分の力を誇示する事ではない。 己の実力をいかに客観視できるか、そして、常に今の場所を向上できるか、また、その力や才能を維持する事が出来るかだ。 今の自分は自由だ。無論、現実的には拘束されてはいるのだが、聖域<しがらみ>を抜け出した彼女は間違いなく 今までの柵から解放された。 何も背負うことなく、無関心に荒野を彷徨う旅人。だけどそれは決して不幸でも、苦しいことでもない。 既存の固定観念を捨て、仮面を被った偽物を卒業し、隠してきた自分をありのままに表現する本来の自分へ帰すのだろう。 いつも慌てて仕舞い込んだ本音も今なら言えるだろう。 今まで維持してきた<二人>にもそれは例外なく当てはまるだろう。 この時こそ彼女――ローザ・ファレルは新たな所業を行わねばならない。 誰の目も、自制心すらも振り切り、隠してきた自分(さぞかし臆病でずるく、小心であっただろう)の抱える想いを <彼>へと解き放たなければならない。 その為には何としてでも此処から生きて抜け出し、<彼>と<彼>二人の元へと辿りつかなければならない。 どうすればいいのか? 今度は精神的な問題から現実的な問題解決へとローザの思考は移っていった…… しばらく考えを張り巡らせていると、鳥籠の如き、この狭き檻に急に明かりが差し込んだ―― 「と……あんがローザかい?」 其処に立っていたのは見知らぬ女性。否、外見こそ女性であるものの、雰囲気は人間のものではない。 おそらくは魔物の類。しかも、凡庸な魔物とは一線を画した何かが感じ取れる… 「ゴルベーザ様の命だ。すぐに、御前を呼んで来いってな。」 やはり自分は運という点に於いても、強い女なのかもしれない。 ようやく自身の気持ちを整頓して、実質的な動きを始めようとした際に、願ってもないチャンスが訪れたのだ。 これを運がいいと言わずして何を言う。有頂天ながらもローザは思った。 「それに……私個人からも聞きたい事があるしね。興味も……」 珍しく明るい思考が頭を占めていたので、その言葉の意味を深く知ることは出来なかった。最も理解しようとしても 人間には理解できぬのかもしれぬが。 「わかったわ」 そう言って小さな首肯をしてローザは歩きだした。 聖域<いつわり>を捨て去り未来<しんじつ>へ――それが今の成すべき所業。 その光は今開かれた。

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