終わりの始まり7

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「ところでシド」 話題を変えるつもりでもセシルは切り出した。 「ん……どうした?」 特に詮索する様子もなくシドが聞き返す。先程までの重い空気を引きずっている様子も感じられない。 「そういえばあの娘が僕の事を王って言ってたんだ」 「あの娘? ああ、メイドの穣ちゃんか?」 セシルは頷く。 「どういう事? 町の方では何も言われなかったけど……」 自分が王と言われた事に対しては、心の片隅で考えている内になんとなくだが理解は出来た。 現在、バロン国は王が存在しない状態である。正確には王は殺された。いつかは分からぬがゴルベーザの手によって。 そして四天王の一人である水のカイナッツォが影武者として王に即位していた。この間までは…… カイナッツォを打倒した後、セシルは本当の王――自分を育ててくれた心優しき騎士が何処かで生きてはいないかと 思った。 しかし、その淡い期待はすぐさまに打ち砕かれた。城の地下深く、セシルは確かに王――父と呼べる者の声を確かに聞いた。 王はもうこの世にはいない。バロンという巨大な国家を治めるには指導者の存在は必要不可欠であろう。 今はまだいい。ゴルベーザという確固たる敵が存在し、各国も一致団結してゴルベーザと戦うはずだ。しかしその戦いが 終わった時、バロンは再び一つの国家としての道を再び歩む事になる。そうなれば誰かが指導者として国を導いていかなければ ならない。 「僕が王になれって事?」 考えてみれば、無理もない話であった。幼い頃に王に拾われたセシルは、王の寵愛を受けて育った。自賛になるがセシル自身も 王の期待に応えれるように努力してきたつもりである。 今亡き先代王に近しく育ったセシルに後継ぎの座を期待する者がいても不思議ではない。 「まだ確定事項ではない」 シドが口を挟む。 「王が偽物であった事。そして王が既にいない事を知っているのも知っているのもごく城のごく僅かな者だけだ」 混乱を避ける為であろう。だから、町の方では何も言われなかったのだ。 「とはいっても完全に賛同している者ばかりという訳ではない。セシル、お前がこれからどうしていくか。それにお前さん自身に 自らなるべき意思がないとどうすることもできんしな」 最終的にはセシルの判断に任せる事にはなっているようだ。 「まだ目的地には到着しないんだろう?」 話題を切り替えシドに尋ねる。彼は黙って頷いた。 今向かっている行先は伝えられていない。だが、其処にはカインがいるらしい。 「僕も少し休んでくるよ。部屋を使わせてもらうよ」 <僕も>というのは<ローザも>という事である。町に迎えに行って一緒に飛空挺に乗った後、彼女はすぐに眠りについたのだ。 ローザも疲れているのだろう。セシルと同じく。 それじゃあと軽い挨拶をした後、セシルは甲板を後にた。 自分が王になるかもしれない。父のように尊敬していた王の後を継ぐことが嬉しくない訳ではない。身寄りのない自分のような者が 王になる事に反対する者もいるだろう。しかし、それに対して謙遜や躊躇いを感じる事はないし、反対する者を納得させる自信もある。 しかし、迫る未来に対して覚悟をするには多少の準備が必要だ。それがどんなに大きなものでも小さなものでも、人は悩むのである。

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