SubStory 1 継承者の出立2

「SubStory 1 継承者の出立2」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

SubStory 1 継承者の出立2」(2007/12/11 (火) 23:08:51) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

ひどく壊されたとはいえ、はじめてこの城を訪れたセシルたちと、もともとの構造をよく知る少年では条件に差がありすぎる。あっという間に見失い、諦めて外に出ようとして、ギルバートとかち合った。 「君たち、どうしてこんなところ?」 「お兄ちゃん!! そっちに男の子来なかった!?」 まだおかんむりのリディアは、外で待てと言われたことなどすっかり忘れているようだ。面食らった様子のギルバートに気付かず、勢いよくまくし立てる。 「ひどいんだよ!  助けてあげたのに、お礼もいわないで逃げてったの!  あたし、もうちょっとで転んじゃうところ──」 「待ってくれ!  城の者が……生き残りがいたのか!?」 「え? うん、あの、そうじゃなくて」 「下の、中庭の南側の廊下にいた。瓦礫に隠れていて見つからなかったらしい」 強い調子でさえぎられ、逆に驚く少女に代わって、セシルが事の次第を説明する。ギルバートの顔に喜色が浮かび、そしてセシルは、自分が感じていた引っかかりの正体を知った。 彼はこの国の王子だ。ダムシアンの人間でもないセシルに手を貸し、見ず知らずの女性を救うよりも先に、やらなければならないことがある。 「ギルバート、やはり君は……」 ──だから。リディアが気付いたあの少年の気配を、彼は感じなかった。 生存者を探そうともせず、さっさと城から出ようとした。 惨禍に心を痛めるふりをして、結局はローザと、彼女を助けたい自分のことしか頭になかった。 臆病で我が身がかわいい暗黒騎士。一度や二度命令に逆らったぐらいで、都合よく変われやしない。 「君は……」 異様な空気を察した二人がセシルの顔を注視する。後に続く言葉を、なんとかして外に押し出そうとした。 ギルバートは、ここに残らなければならない。 だけどローザが。 「殿下。  これは一体、如何なる仕儀にあらせます」 結局は口を噤んだセシルを、まるで叱責するかのように、厳めしい声が彼の背を打った。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。