地底世界10

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「若?」 誰もがしばらくのその老人――家老と呼ばれた者の話を黙って聞いていた。しかし耳慣れぬ単語の登場にカインが言葉を挟む。 「あ、はい若様の事です。王と王妃の間に生まれたご子息の事です。事件の当初、城を離れていたために難を逃れましたが、それ 以来姿を確認できていないのです」 行方不明。しかし、それは生きている可能性があるということ。同時に既に何処かで息絶えている可能性もあるということ。 「その心配はありません」 暗い方向性に目を向けたセシル達を家老が否定する。 「若はエブラーナ忍者の中でも頭一つ抜けた力を持っています。簡単にやられてしまう事はないでしょう。それに……若は一度 熱くなると止まらない性格。おそらくは両親の仇を討とうとしてるのでしょう」 そこが心配なのですが。と最後に小声でつけ加える。 実際にそのエブラーナの若こと王子が今どこでどうしているのか、果たして生きているのかすらも分りはしない。しかし、家老の 老人が信じているのならば大丈夫であろう。 「話は変わりますがセシルさん。あなたがバロンの代表者という事でいいですか?」 ドワーフの王、ジオットが会話にはいってくる。 「僕がですか……僕は……」 王はもういない。地上世界の誰もが今の状況を打破しようとしている。ならば自分も何かをせねばならぬのだろう。 「はい。そういう事にしておいてください」 「そうですか。ならばこうして皆が集まった所で地上・地底合同の作戦会議を行いたいと思う」 もし戦いがひと段落したら自分はバロン王になるのか? それは分からない。だが、今は後ろを振り変えずにただひたすら 前を見ていく。それが未来へと続くはずだ。
「若?」 誰もがしばらくのその老人――家老と呼ばれた者の話を黙って聞いていた。しかし耳慣れぬ単語の登場にカインが言葉を挟む。 「あ、はい若様の事です。王と王妃の間に生まれたご子息の事です。事件の当初、城を離れていたために難を逃れましたが、それ 以来姿を確認できていないのです」 行方不明。しかし、それは生きている可能性があるということ。同時に既に何処かで息絶えている可能性もあるということ。 「その心配はありません」 暗い方向性に目を向けたセシル達を家老が否定する。 「若はエブラーナ忍者の中でも頭一つ抜けた力を持っています。簡単にやられてしまう事はないでしょう。それに……若は一度 熱くなると止まらない性格。おそらくは両親の仇を討とうとしてるのでしょう」 そこが心配なのですが。と最後に小声でつけ加える。 実際にそのエブラーナの若こと王子が今どこでどうしているのか、果たして生きているのかすらも分りはしない。しかし、家老の 老人が信じているのならば大丈夫であろう。 「話は変わりますがセシルさん。あなたがバロンの代表者という事でいいですか?」 ドワーフの王、ジオットが会話にはいってくる。 「僕がですか……僕は……」 王はもういない。地上世界の誰もが今の状況を打破しようとしている。ならば自分も何かをせねばならぬのだろう。 「はい。そういう事にしておいてください」 「そうですか。ならばこうして皆が集まった所で地上・地底合同の作戦会議を行いたいと思う」 もし戦いがひと段落したら自分はバロン王になるのか? それは分からない。だが、今は後ろを振り変えずにただひたすら 前を見ていく。それが未来へと続くはずだ。 -[[地底世界11]]

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