罪の在処13

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残された幼き命。 だが、その儚き夢もあの大津波が全てさらっていってしまった。 セシルはそう思っていた。そう思わざるを得なかった。 暗黒騎士からパラディンへ。そして数多くの出会いと別れを経て、世界を駆けこうしてもう一つの 世界に来た今になってさえ、彼女の所存はつかめずにいた。 ましてや成長した大人ならばともかくとして、あのような幼き子供がどこかで生き延びてるなど到底考えられる 事ではなかった。 きっと生きているはず。 心の中ではそう思い、仲間達との会話の中でもそう言ってきた。 しかしいつの間にか心の何処かには諦めの考えが浮かんでいたのだろう。いつしか彼女の無事を祈りながらも 既に世界に彼女は存在しない。そう思いこんでいたのだ。 今目の前で起きているこの状況はそのような諦めと思い込みの思考を打ち破るには十分すぎる内容であった。 万一彼女ならば? 新たな疑問がセシルを支配する。 言い方は悪いが、彼女が召還士と呼ばれる特別な血を引いているとしてもやはり子供だ。胸に宿る強大な力を完全に上手く扱える訳ではなかった。 実際、母を失った悲しみが彼女を暴走させた時もあった。あの時は大地の巨人を呼び出し辺り一体に甚大な被害をもたらした。 だが逆にそれ以降の彼女は温厚なチョコボを呼び出す程度にしかその力を発揮していない。 最初、黒魔法や白魔法の基礎魔法でさえ彼女は上手く扱えなかった。恐怖によって炎魔法の行使を拒否した時もあった。 その点は今は亡き偉大な賢者の指導や仲間達との交流で、段々と腕を上げてはいったのだが。 良くも悪くもセシルの彼女の召還士としての一面での印象は<幼い>ものであった。素質は十分にあれど激しい感情の揺れ幅が 大幅に力を不安定にしている。 霧の龍が首をしならせ、大きな口から白き息を吹き出す。粒状の白玉を大量に含んだそれは一点の迷いも無くゴルベーザと 黒龍へと向かっていく。 粒状の息は粉雪の如く黒き意志へと容赦なく降りかかった。黒龍は既に体の大部分を白で埋め尽くされている。 やがて身をよじらせたと思ったら、黒龍は生み出された時とは逆に、段々とその形を元の黒き煙へと姿を変えていく。 煙となったそれはやがてはあちこちへと拡散しついには、龍の形を確認する事はできなくなった。同時に辺りを覆い尽くす黒き闇は ひっそりとなりをひそめ、クリスタルルームを彩る黒はゴルベーザの姿一つであった。 代わりに辺り一体には霧が立ちこめる事となった。 やはりだ 一部終始を見てセシルは確信した。 霧の龍は力を暴走させる事なく安定した力で闇を退けた。それはあの時、彼女の母親が操った時の龍と同じく、一点の狂いも無く。 だが<彼女>は……自分の記憶にある<彼女>は……体に負担のかかるエーテルを無茶して飲んで傷を嫌そうとする頑固だけど 曇りのない意志を持つ<彼女>…… その面影を霧の龍から感じ取ることは出来なかった。 -[[罪の在処14]]

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