罪の在処19

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「この事はあちらの世界でも話題になったわ」 ここからは、リディアが最初に言ったその後の出来事になるのだろう。 「あの津波には私自身も巻き込まれた、だけど流れ着いた先は地上ではなかった。幻獣界だったの」 どうりでリディアは世界中の何処を巡ってもいない訳だ。 「なんで其処にたどり着けたのかは私にも分からない。幻獣王様を呼んだ召還士が現れた事、結果的にそれが王様の暴走を招いてしまった事は 幻獣界でも深刻な問題として扱われたの」 「ちょっとした騒ぎになったって事?」 「ちっとどころじゃなかった。もの凄い騒ぎで事の発端となった人物――私の処理については大きく議論される事になったわ。危険だからこの世界に 閉じこめておこうとか、記憶を全て消して地上世界に返すべきだとか。どれも厳しいものだった」 向こうの世界を統べる王の力を意のままに操ったのだ。幻獣達がリディアを危険視するのも無理はないだろう。 「でも、そんな最中の事だった。幻獣王様が一つの提案をくれたの……その力を負に使うな、より正しき方向へ――私に私の力を見直すだけの時間を くれたの……」 段々と話が繋がってきた。散らばった断片が纏まっていくようであった。 「幻獣界の時間の流れはこの地上や地底とは違うの――」 「だからか」 そこまで言ったのを確認してセシルは彼女に関する真実を述べた。 「幻獣界の十年は僕たちの世界ではほんの僅かな時間に過ぎない。つまり、僕たちの世界に比べて圧倒的に時間の進みが早いって事か」 「うん――でもおかげで私は自分の罪を見つめ直して改めるだけの時間を手に入れた。普通の世界だったら恨んで、悲しんでいると時間という絶対的な ものが過ぎ去っていく。それは個人の恨みを始めとした感情をいつの間にか流し去ってしまう。あらゆる者が通り過ぎていく中、どこかでその感情を 有耶無耶のまま起き去ってしまう。でも幻獣界での暮らしは私に考えるだけの時間をくれた。冷静になって物事を見て考えて、戦えるようになる為の 時間を与えてくれた。あの世界で私は凄く強くなれたの」 彼女が再会に言った台詞である「ただいまセシル。十年待ったよ」 その言葉の違和感がようやく説けた。ただいまなのに待ったというのは幻獣界での修行期間の事を言っていたのだ。あそこで、あの時間の流れが違う世界で リディアは自分を抑制し、どんな理不尽な物事でも受け入れるだけの覚悟を手に入れたのだ。 「そしてこれは罰でもあるの……自分の焦りや怒りで回りに多大な被害を与えた自分に対する……」 話はまだ終わらないようであった。 「こっちの世界の事は大体が幻獣界にも情報が入ってきた。その中にはテラお爺ちゃんの事も……」 やはりメテオとそれと運命を共にしたテラの事は知っているようだ。 「丁度三年位前だったかな……」 「!」 その言葉はセシルを驚かせた。 あのメテオの日以来、まだ二週間程度しか経っていない。だが彼女の時間でそれは既に三年も前という事なのだ。 「本当はね……あの時、お爺ちゃんが危機に陥った際に助けに行きたかったの。でもまだあの時の私には、三年前の私にはまだ今程の力は無かった。 助けに行くなんて到底出来なかった。でもあの時の一部始終は知っていたし見ていた……見殺しにしたようなものだよ……」 テラの死をただ黙って一人で見てきたのか、そしてその悲しみを三年も一人で誰とも共有する事なく心に持ち続けたというのか。 それが彼女の罰――だというのか。 「ごめんね……セシル、お爺ちゃん」 彼女が先程ごめんと言ったのはこういう事なのか? だが、これでいいのか? 「いいんだよセシル」 セシルの思考を呼んだのか涙声の彼女は言った。 「もう私は全てを赦そうと思うの。世界には大きな意志が蠢いて大きな運命が存在するの。アンナだってそれがわかっていたから――」 彼女は上を見上げる。そしてそれ以降は何も言わずに手を差し伸べてきた。 「だから私も戦う。冷静になって、全てを受け入れて」 セシルは彼女の細い手をしっかりと掴んだ。 「ああよろしく頼むよ――」

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