去りゆくもの 残されるもの8

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「絶望したのだよ……魔法というものにねぇ……」 しかし続く言葉は最前までの狂気の陰りを充分に感じられるものであった。 「白魔法とは傷ついた人を癒す魔法である。だが、所詮はそれだけなのだよ……ほんの少しの痛みしか和らげる事の出来ぬ 気休め程度の魔法。失われてしまったものを完全に再生することなど到底かなわない、出来そこないで不完全なものなんだよ」 答えとは程遠いルゲイエの絶望の叫びが辺りに響き渡った。 「私は可能性を感じていたのだ! 魔法に! 人が新たなる段階に進めるのではないかと!! だから探し求めたのだよ!!! 魔法を使うことで、新しい世界がやってくるのではないか? 全ての人間に幸せを!! 人の誰もが理想通りに生きることが できる万能な世界。素晴らしき世界がやってくるはずだ。 しかし、魔法には限界があった。所詮は昔に生まれた古臭い概念 でしかなかったよ!!」 演説気味に喋るルゲイエに狂気は消えていた。 「知っているかね魔法の起源を? 昔この世界に突如現れた一人の人間によってもたらされたもの 「…………」 ローザは既に言葉を持たない。顔は蒼白気味だ。 「正直に言うとね、ローザ君。君たちに魔法を教えるのは悪い気分ではなかった。しかし、私自身の方に限界が近づいていたのだよ。 魔法という、底の見えたものにしがみつくなど……」 何処か遠い目で過去の感傷に浸るルゲイエ。だが、その時間はほんのわずかであった。 「だから私は求めた新しき力を、科学という力を。機械という未知なる力を。正直、ゴルベーザ様が何を考えているのか、何を成そうと しているのか私には分らない。でもあの御方は私に科学に触れる機会と研究する力をくれた。それだけで十分なのだよ……」 「そんな……」 力を振り絞ってローザはやっと悲観の一声を捻り出した。しかしそれ以上は何も言えない。 「それだけで、あなたは――世界がこんなになっているというのに!」 セシルがローザの気持ちを代弁して言葉を引き継ぐ。 「傲慢極まりないなルゲイエ。魔法で万全たる世界を作り出せると信じていたようだが……その考え自体が 「なんとでもいうがいい……私はもはや何事にも動じる気持ちはない。既に計画は動きだしているのですからね~」 けたたましく笑うルゲイエは激昂した様子をひそめ、元の狂気じみた笑いを浮かべていた。 その顔にはこのような状況にも関らず勝ち誇った様子が伺える。 「何を企んでいる?」 「教えるわけないでしょう。まあいずれは嫌でもわかる事ですよ……」 何か含みがあるのは間違いない。訪ねてみるがルゲイエはセシルの疑問を一蹴して踵を返す。 「待て!」 部屋から退出しようとするルゲイエをヤンが引き留めようとする。しかし、白衣の老人は全く聞く耳を持たぬままに歩みを続ける。 「逃げる気か」 そう言ってヤンが後を追いかける。セシル達も続いて後を追いかける。 -[[去りゆくもの 残されるもの9]]

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