ff6 - 14 figaro

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 緊張を走らせたティナを、注視するような目で見ていたエドガーはふっと表情を和ませる。 「心配はいらない。フィガロはガストラ帝国とは同盟を結んでいる。しばらくここでゆっくりしていくと良い」  ガストラ帝国。  耳に残るその言葉を反芻する。  不吉。  ティナはわけも分からず、そう直感する。 「ティナ?」  何も思い出せないと言いながら、ティナはひとつだけ、覚えている事があった。  魔導の力。  記憶喪失だと言ったからなのか、ロックは敢えて、魔導の事について、ティナに訊きはしなかった。  だが、ティナの頭の中には、魔導という言葉が太陽を隠す雲のように漂っている。薄暗く、陰湿で、それはいかずちさえも喚びだせそうな禍々しさ。 「まだ、緊張している?」  気分を害してしまったかな。言いながら、エドガーが、推し量るようにティナの顔を覗き込んだ。その仕草の一つ一つが穏やかで、ティナは首を横に振ってみせる。  まだ、首を振れば消せるほどの、綿雲だ。そう言い聞かせる。 「悪かった。女性を脅かすつもりはなかったんだが」  若い王はまるで王女に対するみたいに、丁寧な物腰で話す。  エドガーの、およそ「王様」とは思えない柔和な雰囲気に、ティナは、全身の緊張を解いて、それをエドガーにも分かるように、静かに深呼吸をしてみせた。 「落ち着いたね?」 「ええ…。」  エドガーを見上げる。 「エドガーって呼んでもいいの?」 「もちろん」  嬉しげにエドガーが言った。 「エドガー。どうして、私によくしてくれるの?」

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