FF6オープニング:ナルシェ懸軍

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他の土地に暮らす者に比べれば慣れているとは言っても、雪道を走るのは楽なこと ではない。凍結した地面の上に積もった新雪を踏みしめながら、彼は背後に迫る 帝国軍よりも先に炭坑の奥へ辿り着かなければならなかった。  炭坑を守る最後の切り札、それを解放するのが彼に課せられた任務である。  走り続ける男の脳裏によみがえるのは、今見たばかりの悪夢の光景。魔導アーマーに 搭乗していたあの無表情の少女は、雪の上に僅かに残った仲間の骨を踏み越えた。 新雪を踏みしめるのとは明らかに違う、骨が砕かれる小さな音が耳から離れない。  数時間前まで、それは確かに会話を交わしていた仲間だったのに。 (くそっ、化け物め……!)  思わず足がもつれた。辛うじて転倒は免れたものの、派手に雪を蹴散らしながら大きく 体勢を崩した。それでも炭坑へ向かう足は止めなかった。  仲間達の命を次々と飲み込んでいった魔導アーマー。あんな化け物に対抗できる力は、 もう1つしか残されていなかった。  それはこれまで、忌むべき存在として炭坑の奥で眠っていたもの。呼び覚ますためには 自らの命を差し出す覚悟さえも必要とする程の存在。しかし、今となっては頼れるのは それだけだった。  帝国に踏みにじられた仲間達の命を、無駄にするわけにはいかない。  彼は意を決し、檻の向こうの闇を見つめた。

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