一節 新たなる旅立ち11

「一節 新たなる旅立ち11」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

一節 新たなる旅立ち11」(2007/12/12 (水) 03:40:05) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

「ギルバート……王子……?」 「うん、そうだよ。知らなかった?」 一部始終を見ていたリディアは、隣で硬直したビッグスの呟きを質問と受け取った。ずいぶん仲が良さそうで、セシルのことまで知っていたのに、何で驚くのかいまいち腑に落ちないが。 オバサンたちが出てきたところで追いついて、どうも邪魔してはいけなさそうだったので、ギルバートの用が済むまで大人しく待っていた。ぶじ仲直りしたようなので、遠慮せず声をかける。 「ギルバート! おいてくなんてひどいよ!」 「リディア?  ……ごめん、忘れてた!」 「なにそれ~~!!」 口では悪いと言いながら、ギルバートの目は笑いっぱなしで、反省した様子がない。オバサンたちまで、なぜかくすくす笑っている。目のはしに、ちょっと涙を浮かべながら。 「あやまるから許しておくれ。  ……ビッグス、頼みがある」 「あ、いやその、俺は……」 「今夜だけ、僕のことは黙っていてくれないかな。  聞いてたかもしれないけど、しばらく砂漠を離れなくちゃいけない。  思い切り歌っておきたいんだ」 くしゃくしゃとリディアの頭を撫でながら、ギルバートの足は早くも、商人たちが集まった焚き火の方に向いている。ずいぶんと嬉しそうなので、特別にもう許してあげようとリディアは思った。 キャラバンの所に戻る。たむろっている商人たちにギルバートが話し掛け、座が大きく盛り上がった。詩人のために場所を空け、ありあわせの木材で即席の舞台をつくる。 人が動いて風がおき、煽られた火が大きく揺れる。 ミストの村でもこうやって、いつも火を燃やしていた。どんなに深い霧が出ても、すぐに村が見つかるように。 大事な目印。大切な火。 もっと大きく、どんどん燃やす。もっと。もっと。もっと。もっと。 そうしたら、炎がはじけて── 「リディア? リディア!」 とつぜん体が揺さぶられる。地面が揺れてる。山が怒る。 「リディア、しっかり!」 「……え?  なんでもないよ?」 「なら、いいけど……具合でも悪いんなら、ちゃんと言わないと」 肩を揺すっていたのはギルバートだった。ちょっとぼんやりしてただけなのに、ずいぶん心配しているみたいだ。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。