二節 剛の王国9

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しかし胸をなでおろす暇は無かった。 門が完全に閉じられ、閂がかけられる前に、あの破城槌が扉を再びこじ開けたからだ。 大量に城内へと入りこむバロン軍。 その時、奥からウェッジやその他数百のモンクを率いたファブール王が現れた。 衣は脱ぎ捨て、その姿は全てのモンク僧の上に立つ王そのものだった。 「怯むな!城内にいれてはならぬ!」 王は叫ぶと、城の中へ中へと大挙する敵に突進する。 そのすぐ後に、セシルやギルバート、さらに彼に仕える全てのファブールの人間が続いた。 セシルが剣を鮮やかに振りまわし、敵の首や腕を切り落とす横で、 ヤンは腕も通れとばかりに両手の鍵爪を目の前の敵に突き刺し、首を掻き斬った。 ギルバートは、乱戦の中竪琴で迫るモンスターを殴りつける。 先ほども言ったように、混戦の中で竪琴の音色は使い物にならないが、 こう使えば意外と硬い上に、なかなかの重量なので、ある程度は戦えた。 …が、彼らの奮闘にもかかわらず、ファブールは徐々に城の奥へと押され、劣勢に陥って行く。 数で攻められている上に、魔物で構成された軍勢ならではの死を恐れない無茶な攻撃によって、 次第にモンク達は追い詰められ、一人また一人と命を落としていった。 「ここはもう保ちませんぞ陛下!一旦奥へ!」 「くそっ!」 押し寄せる敵を食いとめながら怒鳴るウェッジに、王は顔をしかめる。 そうしている間にも敵の勢いはますます強まるばかりだ。 「…ええい!奥へ引き上げよ!退却!」 苦々しげにそういうと、王は鍵爪で剣を弾きながら、もと来た道を戻り始めた。

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