二節 剛の王国18

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 カインの冷たい声がセシルを現実に引き戻した。 「別にお前たちを殺しにきたわけじゃないんだ」  カインは肩をすくめ、クリスタルの前に立つヤンを見やった。 「こんな古臭い城にも興味はないしな」 「貴様っ・・!」  ヤンが今にも飛びかかりそうな形相で睨みつける。  カインはいっこうに意に介していない様子だ。 「素直にクリスタルを差し出した方が身のためだぞ」    ・・そうだ、これが現実なのだ。  いつしか父は父でなくなった。かけがえのない祖国は凶行に手を染め、 曇ることのない誇りは地に堕ちた。そして、最も信頼していた親友は袂を分かち、 いまや自分に刃を向けている。  ────受け入れろ  セシルは過去を振り払うように、決然と剣を抜いた。 「負けはしない」 「・・ふっ」  その不敵なあざけりが会話に幕を下ろした。カインは槍の柄で強く地を突き、 天空を駆ける竜のごとく、高々と跳躍した。セシルは力強く剣を握りしめた。  ────負けはしない 負けられない  ────僕に残された、最後のひとを守るために  決戦の鐘が鳴った。

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