二節 剛の王国19

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 はるか頭上に飛び上がったカインを見上げ、セシルは剣を構えた。  カインとの一騎打ち。それはセシルにとって、さりとて新しい響きをもたない。 毎日のように剣を交え、誰よりも長く腕を競い合ってきた仲だ。いまさら、である。  だが、いま彼らの手にあるのは刃を殺した得物ではない。  親友と命を奪い合う。その冷酷なまぎれもない事実が、徐々に深刻な実感として セシルに重くのしかかり、彼の兜の内側にひとすじ、隠しきれない汗を伝わせた。  カインと自分の力量はほとんど互角、しかし疲弊がある分、自分の方が不利と セシルは踏んだ。お互いの手の内は嫌というほど知り尽くしている。 小手先の競り合いは無用だ。  最後に勝ったのはどちらだったろうか。セシルは剣先に力を込めた。 「よけろ! セシル殿ッ!!」  突然ヤンの怒号が走った。  声に驚き、反射的にセシルは盾を掲げたがその時にはもう遅かった。  カインは空中で身を翻し、跳躍の勢いを保ったままバネのように天井を蹴ると、 まるで隼のように槍を突き出したまま、一瞬でセシルの胸めがけて急降下してきた。 なんとか盾で槍の軌道をそらすのが精一杯だった。肩の肉を鎧ごとえぐりとられ、 痛みに耐える間もなくそのままカインに蹴りとばされる。  体勢を整えながら、セシルは先刻までの自分の未熟さを心底呪った。

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