二節 剛の王国23

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「なあ、セシル」  親しげな声で語りかけてくる。かつて親友として語り合ったときそのままの。  ただ、その表情だけが壊れていた。 「初めてあった日も」  ズ・・、と麻縄を絞める様な音をたてて、槍がますます押し入ってくる。 「最後に戦った日も」  肉が切り裂かれていく。喉の奥から血が溢れてくるのを感じた。 「・・・そして今も」  ぴた、とカインが槍を押しこむ手を止めた。 「俺とお前の差は変わらない、分かるかセシル?」  胸ぐらを掴まれ引き寄せられる。朦朧とした意識の中、セシルは彼を睨みつけた。  ふいにカインの顔から笑みが消えた。  そして、誰にも聞こえないような小さな声で、カインは囁いた。 「お前は彼女にふさわしくない」  こぷ、と口から血が溢れてきた。まずい鉄の味がする。セシルは困惑していた。  彼女? 彼女って・・? 「いま楽にしてやろう」立ち上がり、吐き捨てるように冷たく言い放つ。 「そうはさせん!」  駆けつけようとするヤンを嘲るように見ながら、またあの狂った表情で、 カインは最後の一押しをしようと、槍の柄に手をかけた。  だが、その手はそれ以上動かなかった。  カインは、乱暴な音とともに扉を打ち破ってきた人物を、唖然として見つめていた。

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