三節 Two of us11

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「この馬鹿者がッ!!」  バシッ、と乾いた音を立てて頬を払った。衰弱した彼女の身体が、そのまま倒れ込む。 ローザは目を丸くしていた。痛みよりもむしろ、驚きの方が大きかった。幼い頃から 父親のように接してくれたシドだが、叩かれたのはこれが初めてであった。まだ呆として いるローザの肩をつかみ、シドは分厚いゴーグルを外して語りかけた。その目は、彼が 見せたこともないような悲哀に染まっていた。 「ローザよ・・いつからそんな弱い女になったんじゃ」 「・・・」 「お前さんは強い女のはずじゃ。そして、セシルのことも一番よく知っとるだろう? そのお前さんが、どうしてあやつがそんな真似をするなど言うんじゃ。どうして、 あやつが死ぬなどと・・軽々しく口にするんじゃ。なぜ、あやつが生きてると信じない?  なぁ、ローザよ。あやつがそんな簡単に・・お前を置いて逝ってしまうような人間か?  セシルはそんな男ではないだろう? そう言ってくれ・・」  豪壮な髭にかくれたシドの口は、小刻みに震えていた。  苦しんでいるのはローザだけではなかった。この剛胆の塊のような男ですら、少しずつ 植え込まれるセシルへの疑心にひそかに苦しんでいたのだ。そんなシドにしてみれば、 セシルの誹謗をローザの口からだけは聞かされたくなかった。それはあまりに重い意味を 持ち、彼には堪え難いことだったのだ。  彼女にも、肩を握る手の震えから、シドの心がひしと伝わっていた。けれど、 「シド・・ごめんなさい。・・・でも、もうだめなの。私はもう・・」  もう、這い上がれない。あまりに深いところまで落ちていってしまったから。  このまま、穴の底でゆっくりと息絶えていくだけなのだ。 「セシルに会いたくはないのか?」

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