三節 Two of us30

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 セシルはその思いよらぬ口調の強さにのけぞった。  セシルは覚えていないだろうが、リディアは彼のある言葉を忠実に守ろうとしていた だったバロンの襲撃の前に、セシルが短く言い残したひとこと。 「リディア、ローザを頼むよ!」    もちろんセシルは、本気で彼女に恋人を守ってもらおうなどと思ってそう言ったわけ ではない。ただ単に、彼女の安全を優先するため、ローザの近くにいろ、と。彼女が従い やすいように言葉を選んだつもりにすぎない。  だが、幼く純朴なリディアはそうは受け取らなかった。その言葉は彼女に強い責任感を 植え付け、そして目の前にいながらローザを奪われてしまった今、彼女を大きな無力感と 悔恨の鎖で締め付けていた。  その罪を償うため、今の彼女にできるのは、セシルの傷を癒すことだけだった。  本来ならばそこにいるはずの、ローザの代わりに。  セシルも彼女の瞳から、意地を張っているだけではない真摯な決意の色を感じ取り、 しかたなく息をついた。 「・・わかったよ、リディア。君に任せるよ。  だけど約束してくれ。もうエーテルは飲まない、と」 「わかったわ」 「・・リディア」 「・・・」 「ありがとう」  優しくリディアの肩を叩くと、再びセシルは傷ついた身体を横たえた。ややあって、 静かな寝息が聞こえてはじめた。

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