三節 Two of us31

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 ふいにリディアは涙を流した。  ありがとう、セシルのその言葉が、リディアの心に穏やかな波紋をもたらしていた。  彼女は嬉しかったのだ。 (ごめんなさい・・)  あのとき、自分は黙って見過ごしていた。偉そうなことを言って、強引にギルバートに ついてきたくせに、何も出来なかった。怖かったのだ、あたしは臆病者なんだ。  そのくせ、今こうして彼女の場所に・・、そう、セシルの側にいて、彼を独占していることが嬉しかったのだ。たまらなく。それどころか、そこはもともと自分の場所だった のだから、とすら考えている。臆病なだけではない、あたしは卑怯者だ。 (ごめんなさい・・)  リディアは溢れ出る涙を拭いながら、声を抑えてセシルの胸に手をかざし続けた。  懸命に手先だけに意識を集中しようとしたが、涙はいつまでたっても止まらなかった。    (今・・何時かな)  いつしか涙は薄れ、泣きはらした目の赤みも消えたころ、ふとリディアはうとうと しかけた頭を振り払い、ぼんやりと思った。  暗闇の中、見えるわけもない時計の姿を探してみる。そういえばこの部屋には時計 なんてなかった、そう気づくまでにも随分と時間がかかった。  セシルが寝入ったのが夕暮れ時、それからゆうに6時間ほどが過ぎている。いい加減で 眠気もピークに達し、先ほどから睡魔が彼女の頭をコツコツと小突いていた。 (・・顔でも洗ってこようかな)  フラフラとおぼつかない足取りで、リディアは椅子から立ち上がった。

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