三節 Two of us38

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三節 Two of us38」(2007/12/12 (水) 04:24:08) の最新版変更点

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ファブール最後の晩。リディアに追い立てられ、早々とセシルは床に就いた。傷は塞がったというのに、怪我人扱いは当分変わりそうにない。 少女が寝入ったころに部屋を抜け出し、人気のない訓練場で黙々と剣を振るう。この先、戦いはいっそう厳しいものになる。今のうちに、新しい武器での感覚を体に叩き込んでおいたほうがいい。 ──それ以上に、様々な思いが交錯し、とても眠れそうになかった。 昨晩までは体が休息を命じてくれたが、全快した今はそうも行かない。しかも明日は、いよいよバロンに向けて出発するのだ。これではいけないとわかっていても、考えずにはいられなかった。 カインのこと。ローザのこと。ゴルベーザ。飛空挺。クリスタル。闇。圧倒的な力の差。不安。恐怖。仲間。信頼。変化。 変わってしまったバロン。変わってしまった赤い翼。変わってしまったカイン。 薄暗い空間に浮かぶ雑念に向けて、デスブリンガーの刃を叩きつける。巻き起こった風は壁の松明を揺らめかせ、定まらぬ火影がセシルの心をかき乱す。また刃を振り下ろす。死の太剣の表面で、赤い光が妖しく踊る。 いつしか、渦巻く思いは一点に収束していった。 (カインが……カインも……いつのまに!) ローザが姿を現した途端のあの動揺。気付かない訳にはいかない。”彼女”というのは彼女のことだ。 わかってしまえば不思議でもなんでもない。カインが想いを寄せるのに、あれ以上相応しい女性はいない。ただセシルが鈍かっただけだ。 (ローザ。君は……知ってたのか?) だから、最後まで止めようとしたのか? あの状況でも信じられたのか? 自分を愛した男のことを。 (知らなかったのは、僕だけなのか……?) 見えない。二人の間にあるものが。 昔は違った。セシルがカインを、セシルがローザを、まったく同じように大切に思っていた頃は。 変わってしまったセシル。変わってしまったローザ。とっくに崩れていた、三人という絆。 残ったのは、三組のふたり。 やがて何者かが訓練場に現れた。独特のシルエットから察しはついたが、今は誰とも話す気になれず、ひたすらにセシルは剣を振りつづけた。

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