三節 Two of us39

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気がつくと、セシルはすっかり汗ばんでいた。予想以上に彼とデスブリンガーの相性は良く、握った柄の感触に、初めて手に取った時のよそよそしさはない。 禍々しさは、けして薄れてはいないのに── 背筋にうそ寒いものを覚え、セシルはもう一度素振りをやり直した。基本の型を一通りなぞり、今度こそ鞘に収める。 彼が一息つくのを待って、背後で見守っていたヤンが声をかけた。 「お見事。  しかし、もう休まれたほうが良い」 「……そうですね」 セシルはうなずいた。だが、本当はまだ眠れそうもない。鎮まらぬ胸のうちを見透かしたように、ヤンが問う。 「陛下の言葉を気になさっておいでか?」 「え?」 「見当違いならば申し訳ない。  先程の太刀筋、些か鋭さを欠いているように見えたのでな」 打ち明けるべきか、セシルが答えを出す前に、重い溜息をヤンは吐き出した。 「どのような性質のものであれ、力を得たからにはそれに応じた対価があろう。  私は剣術に疎い。セシル殿が、なにゆえ暗黒騎士の道を選んだかも存じ上げぬ。しかしその技量、己を闇に差し出すだけで、手に入るものでないことはわかる。  どれほどの努力を払ってこられたか……武の道を志す者として、それだけは理解しているつもりだ」 いつになく多弁なモンク僧の言葉に、セシルは以前彼らについて聞いた話を思い出した。 己を鍛え高めることを善しとするファブールでは、日々の研鑚を何よりも尊ぶのだと。闇に根ざした力でさえも、修練の上に成り立つならば、賞賛はされずとも敬意の対象にはなるのだと── 空恐ろしいほどの闇を抱く剣が今日まで伝わったのも、そうした風土が関係しているのかもしれない。 ”所詮は闇の力”、”真の悪には通用しない”、それらが動かしがたい事実であろうと、結果的にセシルが歩んできた道を否定してしまうことを、心苦しく思ったのだろう。 「その、差し出がましいというのは承知しているが……」 「ありがとう。ヤン。  陛下にも……いずれ、直接お礼を申し上げるよ」 セシルには、そこまで徹底した信念はない。あるいは、それさえも見越した上で、ファブール王は彼に助言をくれたのだろう。 いつか活かせる時が来るまで、忘れずにいることをセシルは誓った。

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