ff6 - 29 figaro

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 瞼を開けば、その中央には大臣の姿があった。見計らったように彼はティナに向けて 言葉を続けた。 「弟のマッシュ様は王位継承を巡るゴタゴタに嫌気がさして城を出て行かれたのです。 なんでも、どちらが王様になるかコイン投げで決めたとか……」  もちろん、フィガロがいくら小国とはいえ玉座がコインに賭けられるほど軽いものでは ありませんが。と真剣な表情で続けた大臣は、けれど次の瞬間、小さく笑って言うのだった。 「エドガー様とは、そう言うお方なのです」  呆れているのか、それとも信頼の裏返しからの微笑なのか。にわかには判断できない 表情の大臣を見つめながら、ティナは改めて思うのだった。この国の人達は皆、柔らかい 表情で笑うのだなと。  ――どうすれば、そんな顔で……笑えるのかしら?  ひとつ息を吐き出してティナは扉に背を向ける。足元に広がる赤い絨毯から視線をあげると、 太く大きな柱と石壁が見えた。見た目にも頑丈な作りの城の中にさえいれば、強烈な日差しや 灼熱の砂漠気候から守られている。人々は、だからこそ柔らかい表情で笑えるだろうか。  それだけではない、気がする。  武器を手に携えた衛兵も、気むずかしそうな顔をしていたこの大臣も。皮肉混じりの 神官長さえもが、最後には穏やかな笑顔を向けてくる。そこには必ず国王の名が語られて いた事を思い出す。  ここにいると感じる安心感は、きっとこのせいもあるのだろう。ぼんやりとではあるが、 そんな風に思った。  ティナは顔を上げて大臣の方へ向き直ると、控えめな声で告げたのだった。 「……分かりました」  その言葉を聞いて、扉の前の衛兵はあからさまに安堵の表情を浮かべ、横に立っていた 大臣は、目尻にたくさんの皺を作りながら笑顔で頷いた。  閉ざされた扉の向こう側で繰り広げられている攻防を、室内にいたティナ達が知ることは なかったけれど。  再びこの扉が開かれるときには、あのふたりの笑顔があるのだろう。  そのことをここにいる者達は皆、確信していた。

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