第二話 Other World 1 > 3

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ティーダはザナルカンドの常勝チーム、ザナルカンド・エイブスのエースである。 それも、昨年鳴り物入りで入団し、わずか一年でルーキーからエースまで上り詰めたのだ。 当然、それは彼自身の弛まぬ努力と天性の才能に裏づけされた確かな実力のたまものであるが、 実はもうひとつ、大きな理由が存在する。彼自身の最大のコンプレックスでもある、大きな理由が。 『俺がそのニュースを聞いたのは、3回目の家出をしている時だった。みんなのヒーロー、ジェクトが練習中に行方不明。  捜索打ち切り。俺の親父はジェクトの熱狂的なファンでさぁ……』 ふと、よく聞くテレビ放送のMCの声が聞こえる。すぐ近くのビルを見上げると、特大の屋外ビジョンに伝説の選手……ジェクトの姿が写しだされている。 ティーダはその顔を少しだけ見つめた後、ふん、と吐き捨てると、再びスタジアムへと駆け出した。 『おいおいおい、回想シーン入っちまったぁ……さて! あれから10年。今年から始まったジェクト記念 トーナメント。そのきつ~い潰し合いから勝ち残ったのは、そう、東A地区のエイブスと、南C地区のダグルス!  注目はもちろん、エイブスのエースのアイツ!去年のルーキーが今年はいきなりエースだ!』 10年前に行方不明になった名選手。今大会のような大規模なトーナメントに名前を冠される程の偉大な選手。しかし、ティーダはジェクトを尊敬などしない。 『あのジェクトの血を受け継いだ新しい星、今日はどんな動きを見せてくれるのか!? 今日こそ、あの幻のシュートが炸裂するのか!? 期待するなってのが無理だよなぁ!』 そう、何故ならティーダは、ジェクトの実の息子である。常勝軍団エイブスへとスカウトされた最大の要因も現在の人気もそれが大きく影響している。 そして、ティーダにはそれが耐え難い屈辱であり、コンプレックスなのである。

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