ff6 - 34 figaro

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 扉を叩く音に、ティナのまどろみかけていた瞼はハッキリと意識を持って開かれた。 「……誰?」  聞き返した声は擦れて、相手に通じたかどうかは分からない。そのまま少し待っていると、扉は軋んだ音を立ててゆっくりと開かれた。  入ってきたのはロックだった。 「すまない。窮屈な思いをさせてしまったみたいだ」 「ううん、大丈夫」  申し訳なさそうに謝るこの青年の仕草に、ティナ微かに微笑んだ。まだ出会って数時間も立っていないのに、彼は信頼できる、そう思っている自分がいる。  しかし、彼の表情は明るくない。ティナはさっきまで聞こえていた城内の慌しげな様子を思い出し、何があったのかを尋ねてみた。 「ちょっと面倒なことになりそうだ」 「……ガストラ帝国の兵士が来たの?」  少し間があったが、黙ってても仕方がないと思ったのか、ロックは首を縦に振った。 「彼らは……私を連れ戻しに来たの?」  フィガロと帝国は同盟国だと聞いたが、さっきまで扉越しに感じられた不穏当な空気は、どう考えても友好的な歓迎をしているという雰囲気ではなかった。  ――私は、帝国の兵士。  そんな自分を匿ったりすれば、帝国はフィガロに対していい感情を持たないだろう。  ――だって私はただの兵士じゃない、私は――  内心の不安を汲み取ってくれたのか、ロックがティナの肩に優しく手を置いてくれた。 「大丈夫、君を帝国に差し出したりなんかしない」 「でも、この国は帝国の同盟国なんでしょう?」 「表向きはな」  ティナを落ち着けるためか、ロックはそっと肩に手を置いてベッドに座り込ませると、自分は木作りの三角椅子に腰掛け、心持ち明るい声で説明を始めた。 「ナルシェもそうだが、今世界中で帝国に好意的な国は存在しない。エドガーももちろん、対外的は友好関係を結んでいるように見せかけているけれど、実は誰よりも帝国のやり方を嫌っている。それでなくても君を差し出したりなんかしないさ」 「けど、それじゃ帝国に敵視されてしまう」 「それは遅かれ早かれ同じこと。帝国側も前々からフィガロとの同盟は疎ましく思っていたはずさ。同盟国ではなく、属国として支配下に置くためにはね。もちろんエドガーもそんなことは見越している。 そこで、今度は百八十度立場を変えて、判定国組織リターナーに組しようと画策してるんだ」 「反帝国組織?」  そんな組織があったなんて初耳だ。もちろん、今だ擦れている記憶の中では耳にしたことはあるかもしれないけれど。 「ああ、俺はその橋渡しとして動いている」だから王様とも対等な関係なんだぜ、と笑うがティナの真面目な様子を見て真剣な口調に戻る「ナルジェのジュン、あの人もリターナーの一員なんだぜ」 「リターナー……反帝国組織……私は、帝国の兵士……」 「だった、だろ?」  言われてハッとする。ロックの目は真剣そのもので、真っ直ぐにティナの瞳を覗き込んでいた。  凪の湖のような蒼い瞳。不思議と落ち着きを与えてくれる、澄んだ眼差しだった。 「君は兵士なんかじゃない。兵士だったのは帝国に操られていた偽りの姿。今は違う」 「わからない……よく覚えていない、思い出そうとすると、頭が痛い。私は、どうすればいいの?」 「これからは自分の意思を持てって事さ」  ロックはそっと歩み寄ると、ティナの頭を優しく撫で、くるりと振り返った。 「今は深く考えないこと。道は必ず見えてくるから」 「自分の意思を……?」 「そう、自分がやりたいことを考えて、やりたいように行動する」 「ドロボウのロックが反帝国組織にいるみたいに?」  部屋を出て行こうとしていたロックの膝がガクリと折れる? 「……エドガーが言ったのか」 「え、うん。違うの?」  チッチッチッ、と指を振り、ことさらカッコつけたポーズを取るロック。 「俺はトレジャーハンター。孤高の宝探しさ。盗みなんかやりはしない(そんなに多くは)」   そして「これから忙しくなる、少しでも寝ておきな」と告げて部屋を出て行った。  一人残されたティナの胸のうちに、彼の言葉が何度も繰り返された。  ――自分の意思を持て。  それは、未来へ向けて進むための言葉。 「私は、帝国の兵士じゃない。私は――」

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