竜の騎士団 3

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 もっとも彼の死はある時期まで公にされなかった。当時バロンはまだ開発段階であった飛空艇の 発展に力を入れており、ミスリルとの交易を押し進めている最中だったのだ。優秀な軽金属である ミスリルはそれだけ扱いが難しく、繊細な技術を持つミスリル人達の協力が不可欠だった。しかし 小心な彼らは軍国であるバロンに警戒を抱いており、交渉はなかなかうまくまとまらず、それでも 慎重に慎重を重ね、王自らも何度か訪問し、ようやく交易の確立にこじつけていた、その折りへの 急報だったのだ。  この時期に国内のゴタゴタなどが知れて、折角まとまりかけていた交易が延期などということに なってしまっては元も子もない。王は慚愧の念を飲み込んで、彼の死を伏せることにした。  治安上の問題もあった。当然その頃の竜騎士団はバロンの最たる戦力であり、団長の急死とも あればその影響は国の内側だけに留まらない。たちまち周辺の豪族などは活気づき、それに伴って 魔物も騒ぎだすだろう。いずれにせよ、当分は漏らしたくない事実であったということだ。  結果、このことは竜騎士団と、各兵団の団長にのみ知らされるところとなった。  そして、もう一つだけ。  王の念頭には、幼いカインの存在があった。  七歳を迎えたばかりのカインは、二年前に実の母親を病で亡くしていた。生前の母親は理知的で 穏やかな女性であり、カインもとてもよく懐いていた。それだけに、彼女が死んだときの悲しみも 大きかった。それは五歳の少年にはあまりに受け入れ難い事実で、光に満ち満ちていたカインの 世界は一変してしまった。彼は大好きな槍も捨てて、父親とも口を聞かず、ろくな食事も摂ろうと せずに、毎日部屋にこもったままベッドの上で泣き伏せるようになった。父親にもどうすることも できなかった。叱ったり慰めたりしたところでどうにかなるようなことではない。結局、彼自身も 深い悲しみを抱えながら、ただ時の流れに任せるしかなかった。

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