第1章 SeeD-44

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「追い詰めた?それは違うな。私が貴様をここへと誘なったのだ」 落ち着き払った声でウェッジが返す。 「何言ってんだウェッジさんよ、この状況で何をやろうってんだい」 「こうするのだ」 ウェッジは壁に背を預けると、腰を低く身構え、気を練り始めた。そして・・・ 「ハッ!」 裂帛の気合とともに、両の掌をゼルへと突き出した。 白く輝く闘気がウェッジの掌から放たれる。 「これは、百歩神拳・・・ぐわぁっ」 闘気がゼルを直撃し、ゼルはフロアの中央辺りまで弾き飛ばされ、そのまま床に叩きつけられた。 「この技、うかつに放てば反動で己が身も吹っ飛んでしまうのでな」 なるほど、それで奴は壁際まで後退し、それを支えとしたのか。 「とどめ!」 ウェッジはゼルに向かってダッシュすると、前方宙返りからの強烈な踵落としを放った。 「んなろ」 かろうじて寝返りを打つゼル。 ドゴン!! 数瞬前までゼルがいた箇所に、ウェッジの踵がめり込んでいる。 「百歩神拳とは・・・恐れ入っちまうぜ」 辛くも一撃を逃れたゼルが、苦しい息で言った。 百歩神拳、文字通り百歩の距離から相手を倒すという伝説の拳。 闘気を目に見えるまでに練り上げ、相手にぶつける・・・言葉にすれば簡単だが、 これを実戦レベルで体現しうる者など、存在しないと思っていた。 なのに、実際にこの目で見ることになろうとは・・・ウェッジという男、底が知れない。

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