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その一言に、場の空気が一気に張り詰める。彼――バッシュも、それを言葉にした途端に胸に焦燥が走るのを感じていた。ナブディス。アルケィディア帝国とダルマスカ王国の狭間にある小国。アルケィディア帝国のダルマスカ侵攻を防ぐ、たった一つの堰だった。
そのナブディスが、落ちた――
「なに!?」
王が目を見開き、鋭く囁くように呟いた。そして、その声を遮るように、
「父は!?」
ラスラがバッシュを見上げ、どこか縋るような声を上げた。当然だろう――彼の故郷であるナブラディアの首都、ナブディスが落ちたのだ。家族や民、なによりも国を思う気持ちからか、ラスラの目に悲壮なものが宿る。
バッシュは一瞬言葉を詰まらせた。だが――事実を伝えなければならない。目を伏せる。真摯な彼の視線に耐えられなかった。
「わかりません、ラスラ様……」
「っ……」
バッシュの答えをある程度は予想していたのだろうが――アルケィディア軍の強大な軍事力による侵攻の凄まじさは、身に染みて彼も知っているはずだった。
その為の政略結婚だったのだから。ダルマスカとナブラディア。弱小国家同士の苦肉の策だった――ラスラは言葉を詰まらせた。