一節 闇と霧の邂逅2

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徐々に立ち込めていた霧が、山裾の川を越えるた途端に濃くなった。緑の乏しい傾斜面の一角に、巨人が切り欠いたかのような絶壁がそびえている。灰白色の壁のほぼ中央、足元の道とが交わる箇所だけがごっそりと抉れ、粘性の低い闇を湛えていた。 ミストの大鍾窟。バロン平野とダムシアン砂漠を隔てる山脈を貫く、唯一の道である。 古くから山向こうへの抜け道として重宝されてきたが、その最奥を極めたという記録はない。人知を超えた造形の妙と、常に湧き出し続ける霧のため、幻獣界や冥府に通じているとも信じられてきた。 しかしセシルもカインも、実際にこの洞窟を利用するのは今回が初めてである。近年、やはり魔物が増えているという内部に足を踏み入れ、まず暗闇に目を慣らした。ただでさえ幻獣の居場所は掴めていないというのに、充分に視界の効かないまま動き回る訳にいかない。 瞬きを繰り返すうちに見えてきた光景は──それこそ、この世のものとも思われなかった。 「……凄い」 「ああ。話には聞いていたが、これほどとは……」 小屋ほどの面積をもつ巨大な円盤が、互いに重なり合いながら見渡す限り敷き詰められている。一枚の厚みは、およそ成人男性の半分ほど。せせらぎの音が幾重にも反響し、ひんやりと湿った空気は白く濁っている。 片や竜騎士、片や元飛空挺団の隊長、いずれも天空を自在に飛び回るのが本懐である戦士たちは、初めて目にする地底の光景に、声もなく見入っていた。 どちらからということもなく、再び足を動かし始めるで、どれほどの間があっただろうか。 霧に濡れた足場を気遣いながら歩を続ける彼らの耳に、『その声』は囁きかけてきた。

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