竜の騎士団 19

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 団長の口からカインという言葉を耳にするたび、孤独な彼の胸は憎悪の火に燃えるのだった。  だがその一方で、彼は心から団長のことを敬っていた。そしてまた、彼には団長しか友と呼べる ような人間がいなかった。  そのため、相反する想いはいっそう膨れ上がり、彼の胸を震わせた。あまり胸がざわめくので、 彼はそれを抑えようと手をあてがった。だが、それでも何かがまだ妙だった。  ようやくそのことに気づいて副長が顔を上げると、団長は既に槍を握っていた。戦いに身を置く 者なら嫌でも感じ取ってしまう、あの魔物特有のおぞましい気配がそこら中に漂っていたのだ。  天幕の外に出て、二人は目を見開いた。  山が黒くうねっていた。窪地から、おびただしい数の魔物が駆け上がってきている。木々が なぎ倒されていく音がここまで響いてきていた。 「全軍に知らせろ、ここで食い止める!!」 「団長!」  横の林から飛び出してきたフロータイボールを、団長が一振りで切り伏せる。 「急げ!!!」  副長は後陣に走った。既に異変を察知していた数名が外に出ており、副長のただならぬ様子に 血相を変えて詰め寄ってきた。 「副長、何事です!?」 「急襲だ! 大群がすぐそこまで来ている!!」 「副長! ご指示を!」 「団長はなんとご命令を!? 副長!」 「命令は……!」  そのとき、彼の頭をひとすじの光が過った。  彼の運命を曲げてしまう、声が聞こえたのだ。  ────カインが待っている────

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