一節 闇と霧の邂逅5

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「バロンの者ですね…」 「誰だ!姿を見せろ!」 カインが鋭く叫んだ。やはり、この声の主が幻獣なのか? 声の主は穏やかな、それでいて厳かな口調で続ける。 「ここで引き返せば危害は加えません。即刻引き返すのです。」 「そうはいかない!」 次に声を上げたのはセシルだ。ここまで来て、引き返すわけにはいかない。 「このボムの指輪をミストの村まで届けなくてはならないんだ!」 「引き返す気はないのですね…ならば…仕方ありません!」 声の主がそう言うが早いか、それまで洞窟の中にたちこめていた霧が彼等の目の前一点に集まり、龍の形を作り上げて行った。 「やはりお前が幻獣か!覚悟!」 カイン槍を構えてが叫んだ時には、霧の固まりは白銀に輝く美しい龍――ミストドラゴンへと変貌を遂げていた。

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