FF5 32 風の神殿6

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「お父様!!」 「なに、親父さんの声か!」 そう、レナの父、タイクーン王の声。しかし、声だけ。姿が見えない。 「お父様!!何処にいるの!!」 レナは必死で父を探そうと辺りを見回すが当然姿は見当たらない。 「…レ…ナ……」 やがてクリスタルがあった祭壇に王の姿が浮かび上がった。 「!?」 ファリスはその王の姿を見て、一瞬動揺する。何処かで見覚えがあるような、運命的な何かを感じたようだった。 「お父様!生きてたのね…」 レナは安堵の表情を浮かべる。やっと、捜し求めた父が見つかったのだから… しかし、残酷にもその安息は長く続かない。 「よく聞くのだ。お前達は、選ばれし4人の戦士…4つの心が宿る者」 「え?…お父様!どういうことですか?」 レナは奇妙に感じた。父がこちらの問いかけに答えようとはせず、一方的に話し始めたことを。 「風のクリスタルは砕け散った。そして、他の3つのクリスタルも、砕けようとしている。お前達は、それを守るのだ」 「だから、お父様、ちゃんと説明してください!!」 レナは涙目だ。まったく話が飲み込めない。父は自分の意思ではなく、まるで言わされてるかのようだ。 そんな違和感を感じ取っている。 「邪悪な心が、蘇ろうとしている…全てを闇に変える者…」 その言葉を最後に王は黒い影に包まれ始めた… 「お父様!!」 「行け!4人の戦士よ。クリスタルを守るのだ…」 王はその言葉を最後に完全に影に包まれ、消えた。跡形も無く。 と言うより、王は最初からそこにはいなかったのかもしれない。 「そんな…やっと、逢えたのに…」 レナは目に涙を浮かべて俯いた。バッツもガラフもファリスもさすがに掛ける言葉が無い。 「!!」 その時、またも辺りがあの光に包まれた。 そして砕け散ったクリスタルのかけらが輝きながらバッツたちに向かって動き始めた… 「うわ、かけらが勝手に動いてるぞ!」 「これはどういうことじゃ…」 「…………」 黙ってかけらのひとつを手にとるファリス。その瞬間、ファリスの姿が黒魔導士の姿に変わったのだ。 「これは…かけらに色々な力が封じ込められてるって言うのか?」 そう言いながらバッツはかけらを拾い上げる。するとナイトの姿に変化した。 「…どうやら、そのようじゃの」 ガラフは確信をもってかけらを手にとる。モンクの姿に変化。 「この力を使って、残されたクリスタルを守れと言うの…」 レナはさっき父が残していった言葉をようやく理解し始める。 レナはクリスタルの力によって白魔導士の姿に変わった。 「このかけらは俺たちの力になってくれるみたいだな…」 「ああ、そのようじゃな…」 「とりあえずトゥールに戻るか」 「ええ……(…お父様…)」 レナはクリスタルのかけらに少しだけ励まされていた。 何故なら、そのかけらに僅かな『希望』を感じ取る事が出来たから。 「(お父様は…きっと生きている…)」 こうして風の神殿での運命を彼らは受け入れた。 影に包まれ消えたタイクーン王。砕け散った風のクリスタル。 4人それぞれ、この旅が徐々に自分の思っていたものより遥かに大きくなりそうな事を感じ始めていた。

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