一節 闇と霧の邂逅8

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一方、セシルは剣を構え、その場に立ち尽くしていた。 自分を包む白銀の霧など見えてはいない。代わりに彼を取り囲んでいるのは、音一つない闇の世界。 心を無にし、敵の気配一点に精神を集中しているのだ。 いま、霧の幻獣ミストドラゴンはセシルの周りを素早く飛び回り、彼を翻弄しようとしている。 その状態が暫く続いた後、幻獣は攻撃を仕掛けてきた。背後から牙をむいて飛びかかってきたのだ。 大きく開けられた口が噛み合わされた時、そこに暗黒騎士の姿はなく、代わりに真横から剣の切っ先が襲いかかってきた。 目を突かれる寸でのところでくるりと回転して攻撃を避け、再びドラゴンの頭は辺りを飛び回り始める。 「さすがですね…この霧のなかで私の動きを捉えているとは。」 「甘く見ないで欲しいな、幻獣。その程度の動きなら、容易に掴める。」 「よろしい。では、これはどうです!?」 不意に、幻獣の動きがセシルの真正面で止まった。口の中に霧を集め、凝縮し、こちらに向かって吐き出そうとしている。 「今度はこちらからも行かせてもらう!」 セシルは叫び終えると、再び剣を構え、意識を一点に集中した。 剣の刃に、魔力にも似た黒いオーラが集まっていく。弱小な魔物を一瞬にして全滅させた、あの技を再び放とうとしているのだ。 もっとも、今回は普通の魔物を倒した時とは比べ物にならない威力を秘めているが。 白銀の霧を凝縮して撃ち出されたブレスと、セシルの生命の一部を食らった漆黒の斬撃が放たれるのは、同時の事だった。

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