一節 航海11

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 帆が無くなっていた。跡形も無く。  海王がその身を一振りしただけで、あれほど頑丈であった帆が、まるで小枝を折るように 吹っ飛ばされてしまったのだ。あまりにも圧倒的な力。  破壊された音すら聞こえなかった。・・ただ、風の音だけが。 「畜生め! どうしろってんだ!!」 「ヤン! 無事か!?」  腹立たしげに舵を叩く船長。一方セシルは、帆を抑えていたヤンの安否を求めた。 「ヤン!! どこだーーーッ!」 「ここだ、セシル殿!」  帆柱の陰からヤンの声が届く。

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