一節 航海13

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「ギャアアアアァアア!!」  再び空気を切り裂くような叫び声があがる。セシルの剣は、海神の一撃を寸分違わず 捉えていた。暗黒波の反動で二人とも後ろに吹き飛ばされ、続けて彼がえぐり落とした リヴァイアサンの尾の一部が甲板に落ちてきた。 「すっ、すげえじゃねえかあンた!」 「ま、まだだ……あれで退くような相手じゃないっ」  セシルは悶え転げるリヴァイアサンを伺いながら、手を握りしめた。震えが残っているが、 拳にはじゅうぶんに力がこもった。まだいける。 「船長!」 「おぉとも!」  阿吽の呼吸で立ち上がり、彼らはともに再び先端に走り出した。先ほどは落胆しかけていた 船長の目にも、力強い光が灯りだしていた。 「・・次の一撃が勝負だ!」 「頼むぜセシルさんよ!」  腰を支える力強い手を感じながら、セシルは今一度剣を構えた。  ところが、 「・・な、なんでえ?」 「渦が・・、止まった?」  突然、今の今まで船を振り回していた大渦が消滅してしまった。海域の中心に佇む海神は、 頭をもたげたまま動かない。たちまち竦み上がっていた船員たちは狂喜して騒ぎ始めた。 「終わったのか・・?」  用心深く様子をうかがいながら、セシルも気を和らげかけた。だが、それを叱咤するかの ように、すぐに腰を支える力に一段と重みがかけられた。

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