二節 試練9

「二節 試練9」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

二節 試練9」(2007/12/13 (木) 04:40:19) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

 大きな外壁越しにも見える神殿のなだらかな円蓋が日光を反射し、セシルの瞼を強く打つ。 正門からまっすぐと続く道は、人々を迷うことなくこの神殿まで導く。その神殿を中心に、 特徴的な造形の家屋が円を描くように整然と建ち並び、魔物を寄せ付けぬよう魔法印が施された 純白の外壁がそれらをぐるりと囲っている。  厳粛で、かつ美しい魔法国家ミシディアの姿である。  開けた正門から街並が見渡せる。遠めにも、静かなにぎわいに満ちた空気が見て取れた。 かつてセシルが訪れた時には感じられなかった空気が。  いや、むしろこれがこの国の本当の姿なのだろう。だが、あの時の僕たちには、そんなことが わかるはずもなかったのだ。目を細めながら、セシルは巨大な外壁を眺めた。高潔な英知の結晶 である聖なる結界、魔物すら寄せ付けぬそれも、人の心の闇を弾くことはできなかった。 「・・!!!」  正門の側にいた黒魔導士がセシルの姿に気づき、声を失った様子で走っていった。当然の反応 である。先に国を蹂躙した張本人を、笑って迎える者などあろうはずもない。  けれど、今のセシルの心は、悲しみよりももっと大きな感情で満たされていた。  自分がここに来たのはただの偶然だ。気まぐれな海の流れが自分をここまで運んだにすぎない。  だが、この国こそが僕が訪れなければならない地だったのだ。  僕の中で、闇が広がった始まりの場所。  セシルは大きく息を吸い込むと、再びミシディアの土に足を踏み入れた。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。