二節 試練11

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 だが、その歩みも止められる。  ふいに頭が熱くなり、突き落とされるようなめまいがセシルを襲った。グラグラと世界が揺れ、 徐々に周囲の景色が大きくなっていく。おまけに身体の自由が利かない。  ようやくその意味に気づいた時には、彼の身体はどす黒い蛙の姿へと変わっていた。 「思い知ったか!!」  いつのまにか背後にいた黒魔導士が、セシルを乱暴につかみ上げる。憎しみの炎で瞳をギラつか せた魔導士は、思うさま彼を地に叩き付けた。 「どうだ! 何か言うことがあるか!?」  そういったところで、出てくるのは蛙特有の低い鳴き声だけである。その惨めな様子を楽し そうに嘲笑い、また魔導士はセシルを嬲りつづけた。  気づけば周囲には人だかりが出来ている。取り囲むように事の成り行きを傍観している彼らの なかには、嘲笑う者、喝采する者もいれば、ただ無表情に眺める者、不愉快そうな表情で目を 背ける者もいた。ただ、誰一人としてその暴行を止めようとする者はいなかった。  復讐に燃える魔導士の熱情はますます暴れ回る。魔導士は、泥まじりの水たまりを見つけ、 そこにセシルを押し付けた。 「ほぅら、お前にはそこがお似合いだよ」  蛙の身体と言っても、魔法によるまやかしの代物である。すぐに息がつまり、セシルは身を よじって抵抗したが、いかんせん無駄な試みであった。  遠くで群衆の笑い声を聞きながら、セシルの意識は遠ざかっていった。 「やめよ!!」

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