二節 試練30

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結局ジェシーの言葉を肯定する結果になり、長老は自嘲するように口の端をゆがめた。それが、 どうしてか、ジェシーにはひどく残酷な仕打ちのように映った。  長老の話し方にはずっと、何かを伝えたがっているような、どこか婉曲な響きがこめられていた のだが、些か冷静さを欠いていたジェシーには、それがあたかも強者が弱者を弄んでいるように 見えていた。 「……それなら、なぜあの子たちを選んだのです」  彼女本来の、直情的な闘志を瞳に乗せて、彼女は長老を睨んだ。 「不満かね? 確かにあの二人は幼いが、それを補って余りある才を持っておる。  わしや、おぬしよりもじゃ。いつまでも街の中におさまっているような器ではない」 「そんなことではありません!」  白々しい言葉にジェシーは苛立つ。 「あの子たちは……あの子たちのご両親は……ッ」  あどけない双子の顔がちらつき、言葉に詰まってしまう。  切なげに視線を彷徨わせるジェシーに目を細めながら、長老は静かに言葉を続けた。 「であるからこそ、『修行をかねている』と申したのだ」 「………どういう意味です?」 「……既に言ったように、あの子らの秘めたる素質は計り知れぬものだ。誇張などではない、 あの二人は間違いなく、わしが今まで見て来た誰よりも有能な魔導士じゃ。彼らが民の先に立ち、 やがてこのミシディアを導くようになるのは、そう遠い未来ではないだろう。  じゃが、表面上はどうあれ、あの二人の心は未だに両親を失った悲しみで曇っておる。魔道とは 心の道、惑いのないものにしかその道を進むことはできぬ。幼いまま、悲しみを背負ったままに 歩み続ければ、いずれは道を踏み外してしまうじゃろう。そのためにも、過去はあの子ら自身が 決別せねばならぬのだよ」 「無茶です! あの二人はまだ五つの子供なんですよ!?  そんな重荷を、あの子たちだけに背負わせるおつもりですか!!」

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