三節 山間6

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足場の悪い山道を進んでいると、まもなく前方になにやら赤いものが映った。近づいて見ると、 ゆらめいているように見えたそれは巨大な火柱だった。 「あれは?」 「長老様の魔法ですわ」  ポロムが手短に説明する。 「力なき者が、無闇と山に入り込まないようにと張られた結界です」 「結界、か」  頷きながらセシルは魔法の火に目を向けた。ごうごうと唸りをあげて燃えさかる炎は、かなりの 距離をとっていても熱を及ぼしてくる。なるほど、壁のように山路を遮っているそれは、まさしく 結界と呼ぶに相応しい代物だ。 「しかし、これじゃ僕たちも……」 「大丈夫ですわ。────パロム、出番よ!」 「わかってるよ! いちいち威張んな!」  悪態をつくパロムは既に炎の前に進み出ており、ロッドを翳すと、静かに目を閉じた。セシルも すぐにその意図を察して、ポロムと共に後ろに退がる。パロムが目を見開き、咆哮をあげた。 「ブリザドぉッ!」  杖の先端の宝玉から勢いよく飛び出た吹雪が、結界の炎に襲いかかる。たちまち地面に 吸い込まれるように火は消えてしまった。 「見たかあんちゃん、ざっとこんなもんさ!」 「パロム!」  すかさずポカリ、とポロムのげんこつが入る。 「おごり高ぶってはいけないと長老がおっしゃってるでしょ!」 「いてーな!」 「まったく……。さ、それではまいりましょ。セシルさん」  ニッコリと見上げるポロム。ところが、呼びかけられた方のセシルは、消えた炎の名残を 見つめたまま、ぼうっと立ち尽くしていた。

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