FF6-Mt.koltz-6

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 筋肉に覆われた2メートルに達しようかという巨躯。短く刈り込んではいたが、自分とよく似た色の金髪。わずかに伸びている後ろ髪は赤いリボンで結っている。  風が吹いた。  土や草の匂いに混じって、僅かに茶の香りがした。かいだことのある、あいつの好きな、お茶の香りが。 「大丈夫か、エドガー?」 「……エドガー?」  昔はあんなに病弱だったのに、大きくなったな……  ティナとロックに助け起こされながらも、エドガーはその逞しい後姿を眺め続けていた。 「マッシュか!」  鼻血をぬぐいながら、バルガスは怒りと憎しみのこもった声をあげた。  対するマッシュの表情は、戸惑いと、悲しみ。 「バルガス、なぜ……なぜ、なぜ、ダンカン師匠を殺した? 実の息子で、兄弟子の貴方が!」 「それはなあ……奥義継承者は息子の俺でなく……拾い子のお前にさせるとぬかしたからだ!」  バルガスの言葉に、マッシュはかぶりを振って否定した。 「それは違う!」 「どう違うんだ? 違わないさ、そうお前の顔に書いてあるぜ!」 「師は、俺ではなく……バルガス! 貴方の素質を……」 「たわごとなど聞きたくないわ!」  吼えてバルガスは身構えた。 「自らあみ出した奥義! そのパワーを見るがいい!」  狼狽するマッシュを睨みすえ、バルガスが叫ぶ。 「必殺! 連風燕略拳!」  再び繰り出される竜巻に、マッシュは踏ん張って耐えた。  しかし次の瞬間、マッシュの眼前には――マッシュから見ても――巨大な肉体が迫っていた。それはまさに風の如く。変幻自在に繰り出される拳がマッシュを襲う! 「おぉああぁあ!」  しかし修行の賜物か、たとえ精神が不安定であろうともマッシュの体は自然に動いていた。無数の拳を弾き、受け止め、避け……  再び両者は距離をとって対峙した。バルガスは無傷。マッシュは腹部に一撃くらっていた。 「さすがはマッシュ。親父が見込んだだけのことはある男」 「や、やるのか……」 「宿命だ。そしてお前には私を倒すことは出来ぬ! それもまた、宿命だ!」  戸惑いの表情を残したまま、マッシュは構えた。再び突撃してくるバルガスを迎え撃つ。  怒りに震える拳を避け、憎しみに燃える脚を受け。バルガスの猛攻に、マッシュは防戦するしかなかった。 「オラオラ!」  受けて受けて避けて受けて……マッシュは体の異常に気が付いて大きく後退した。  腹の奥に違和感が…… 「ごほ!?」  大きく咳き込み、マッシュの口の中に鉄の味が広がった。手には赤い液体。腹が痛む、膝が震える。 「お前の命も、あとわずかだ!」  どうやら、先ほどの一撃が効いているようである。確かにあまり長くは持ちそうにない。  早くけりをつけたいところだが、止まない攻撃に反撃の糸口を見つけられず、ダメージだけが徐々にマッシュの体を蝕んでいった。 「どうしたマッシュ、あとがないぞ!」  バルガスのハイキックを腕を交差させて受け、大きく後退したマッシュは、背をなで上げる風に背後を振り向いた。そこには暗い谷底が口を開けて待っていた。  腹の痛みも増してきている。口の中に広がっていた鉄の味もわからなくなってきた。息も荒く、片膝をついてしまっている。 「くっ、そ……!」  バルガスがゆっくりと近づいてくる。勝利を確信しているのだろう。口の端を吊り上げ、邪悪な笑みを浮かべている。  突如、マッシュの脳裏にある人物が現れた。もう二度と聞くことはないと思っていた師の姿が。 『闘いの基本は隙をつくことじゃ。そして、その隙は勝利を確信したときにこそ出やすい。  よいか、たとえ相手が這いつくばっていようと、虫の息であろうと、決して隙を見せてはいかん! 手負いの獣ほど危険なものはいないからな。  逆に、自分が追い詰められているときにこそ、相手に神経を集中させるのじゃ。勝利を確信した相手には隙が生じる。  相手の隙を見極められれば、多少の実力差など簡単に覆せるのじゃ!』  そう言いながら、師はいつもマッシュとバルガスを手玉に取っていた。一部の隙も見せずに。  バルガスが拳を振り上げた。……隙だらけだ。 「俺の勝ちだ。やはり奥義を継承すべきは俺だったんだ!」 (師匠から何を教わっていたんだ、バルガス……。これじゃあ、師匠がうかばれないじゃないか)  振り下ろされる拳。隙だらけの大ぶりな一撃をマッシュはバルガスの懐に飛び込んでかわした。 「バルガス……」  マッシュの拳に力がこもる。腕が一回り大きくなったような気がした。 「爆裂拳!」  無防備な兄弟子の腹に、マッシュは何度も何度も拳をめり込ませた。師から教わった奥義を、全力でバルガスに叩き込んだ。 「うっがががっ! す、既にその技を……!」  バルガスは前のめりに倒れ、そのまま谷底へと落下していった。 「貴方のそのおごりさえなければ……師は…………」  つぶやくマッシュの言葉は、谷に反響することもなく。  暗い谷底は、次の食事を待ちわびているように口を開いていた。

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