FF5 62 飛竜16

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「ヒヒヒヒッ!焼け死にな!」 マギサは再び魔法の標的をファリスに戻した。 一瞬、ゆら、とファリスの視界が歪んだ。その光景は見覚えがあった。黒魔法『ファイア』。 しかしマギサの放とうとしているそれは、道中レナが放ったものより威力が大きいだろう。熱の感じ方が違う。ましてやこの 至近距離で受ければ剣で振り払うどころの問題ではない。全身丸焼きにされてしまう。 ファリスはほんの一瞬考え、そして、 「おおおおお!!」 マントで身を守りつつ、そのまま突進する。 直後、灼熱が全身を包む。ファリスならば二拍あればこの灼熱を突破し、マギサに肉迫できるだろう。火炎自体の殺傷力 は低い。一種の賭けではあるが、少ないダメージで接近できれば勝てると踏んだのだ。 だがこの炎はただの炎ではない。魔力で練られた、意志を持った悪意の火。執拗にファリスに纏わりつき、焼き尽くそうと猛る。 二泊、ファリスは灼熱を脱し、剣を振り下ろす。マギサは咄嗟に腰から短剣を抜き、剣を交えた。 押しつ押されつの均衡。本来なら腕力ではファリスに分があるのだが、ファリスは段々と力負けし、押されつつあった。 ファリスはファイアの炎に焼かれ、手足の神経が麻痺しかけていた。筋肉に力が入らないうえに、膝は震えている。 「ヒヒ・・・ヒ・・・」 「ちっ・・・しくった・・・!」 二人の視線が交わった。何が気に入らなかったかと言えば、マギサはファリスのその眼が気に入らなかった。絶望を知らない、 決して諦観しないその勇気が。 「アアアアア!」 力任せにファリスを押し倒した。仰向けに倒れるファリスの上に馬乗りになったマギサ、ファリスの眼はまだ絶望しない。 それに完全にキレたのだろう、素早く剣を振り上げ、ファリスの首に突き立てようと振り下ろす、 その直前 その腕を、死角から素早く接近したガラフが掴んだ。 「フンッ!」 マギサに防御体勢を取らせる間もなく、一本背負いの要領で空中に放り投げた。

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